虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

対家族製作 その12



 世界に干渉する穴を塞ぐ、それは本来人の身で行うことのできない神の御業に近い。
 ファンタジーな成分が作用するEHOの世界だからこそ、それが可能となっている。

「それで、『プログレス』以外でならなんとかなるとのことだが……『SEBAS』、俺は具体的に何をすればいいんだ?」

《まず、旦那様にはある[称号]のセットをお願いいたします。それを付けることで、作戦の成功率が向上します》

「ふむふむ、その[称号]とは?」

《──『世界を繋ぐ者』、『理の改変者』、『救星に至る者』、『星の自浄作用』……そして『機虎の主』です》

 最後の[称号]の名前を聞き、何をしたいのかはよく分かった。
 言われた通りの[称号]を探し、『生者』のおまけ能力であるサブセット枠に付ける。

 これらに加え、『生』と『死』が名称に含まれる[称号]は無制限で使用可能。
 その組み合わせ、そして今回一番重要になるのは──

「来い、メカトラ!」

『ガウッ!』

 俺の声に呼応して、[アイテムボックス]から現れた機械仕掛けの虎。
 ただし、その大きさは子供用のぬいぐるみほどで、獰猛さなどはまったく感じない。

「メカトラ、今回呼んだのは他でもない、お前に願いたいことが決まったからだ」

『ガウ?』

「俺の願いは────」

 それは『SEBAS』に言っていない、だが分かってくれているであろうもの。
 こんな状況だからと、それに特化したわけではないが必要な願いを伝える。

 かつてメカドラに誓ったのは力、だが同じことを願おうと問題は解決しない。
 なればこそ、『プログレス』の上位機体である彼に願うものは──

『ガウッ!』

「できるのか?」

『ガウッ、ガウガウ!』

 願いは叶えられた。
 メカトラは光を放ち、己の体を作り変えて新たな姿を創造する。

「──『機鍵[虎星]』……ありがとうな」

『ガウッ!』

「そうだな、お礼は終わらせてから言った方がいいよな──“堅虎封緘”!」

 名前の通り、鍵の姿になっていたメカトラがさらに大きくなる。
 鍵穴など存在しない空間の罅、その大きさに合わせた代物へ。

「重さも感じないし、まさに俺の願いを叶えてくれるわけだな」

 自分で扱えない仕様では、俺にはどうしようもなかったからな。
 自身で重力を操作することで、俺の感じる重みをゼロにしてくれていた。

 そんな虎型の鍵を持ち上げ、空間の罅に勢いよく差し込む。
 少しだけ、抵抗感を途中で覚えたが、それでも強行突破し突っ込んだ。

「差した鍵は──捻る!」

 力強く(本人的に)右に回せば、罅が何やら激しく閃光を放つ。
 だが鍵は異様なほど特別な代物だし、使用者は殺しても生き残るクソスペック。

 抵抗空しく、そのまま鍵は引き抜かれ──罅はゆっくりと消滅していくのだった。


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