虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

対家族製作 その08



 パシフィス世界は大きな盤で、星サイズの巨大な亀の背中に載っていることが判明。
 また、ドローンによる空撮では、人の存在は確認できなかった。

 だが知的生命体が居ないわけじゃない。
 その痕跡を空からドローンが見つけ出してくれたので、とりあえずはそこを目指してみることに。

「知的生命体か……そもそも、人型の存在は否定されているわけだしな。同時に、向こうの世界だと風兎みたいな聖獣やら森獣も話せることが分かっている……つまり、非動物型でも話せるようになっているのか?」

《地球と違い、星の力が多くの存在に影響を与えています。その分、『否定』された存在は限定されているでしょう》

「【刀王】の自前の妖刀も、意思を持っていたよな……付喪神的な存在も実在しているわけだし、何ならこれを作れるんだよ」

 これ、とはドローンが空撮してきた映像に収まっていた建物。
 建物といっても、さすがに人が作る町ほどではない……集落といったレベルだろうか。

 動物でも付喪神のような存在でもない。
 それでも集団で住まう場所を確保できるぐらいには、知性を持ち合わせた存在……果たして、何者なのだろうか。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 E2 ???

 ──結論から言おう、そこには誰も住んではいなかった。

 死亡レーダーで周囲を探っても、俺に死をもたらす存在は確認できない。
 さらにいうと、実際に見た集落も人が住めなさそうなほどに荒廃していた。

「警戒して高度を上げ過ぎていたか? しかしこれは……いったい何があったのやら」

 ボロボロな家の一つに入ってみるが、そこには申し訳程度に藁が敷かれている程度。
 魔道具や家具、食器なども無い……やはり人族ほどの知性は持ち合わせていないのか?

《旦那様、追加のご報告が》

「今は何でも知っておきたい、言ってくれ」

《追加調査を行わせていたドローンが、別世界の痕跡を確認しました》

「…………えっと、ちょっと待ってくれよ。それはこのパシフィス世界とも、もちろん俺たちが来たアイスプルとも違う世界ってことで良いんだよな?」

 少なくともレムリア世界には、そういった他世界との繋がりは無かった。
 いや、正しくは『今は』無かったと表現すべきだろうか。

 かつては幻想大陸の名を冠した世界同士、繋がっていた点もあったらしい。
 だが『否定』されてきたパシフィス世界と繋がっていたかは、まだ定かではないが。

 同様に、別の世界とこの世界が接続していた可能性は無いわけではない。
 だがいったい、この世界に何があったというのだろうか。


「虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く