虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

対家族製作 その04



 ──パシフィス。

 地球上で未確認の、存在しないはずの大陸の名称だ。
 しかし、その名を冠した世界は実在していることを俺は知っている。

「……今現在、進行形で居るからな」

 この世界を一言で表現するならば──ありえない場所。
 曰く、否定された概念が息づく世界とかつて『SEBAS』が言っていた。

 幻想大陸、あるいは遺失世界。
 すべての存在が霊体として生きているレムリア同様に、この世界には『否定』を肯定してくれる場所なのだろう。

「『幻滅世界パシフィス』、ある意味幻が消滅するからなんだろうな」

 渡航を許可され、[マップ]に表示されるようになった情報を確認する。
 ……そう、ついに俺は許可を得たのだ──あの少女から。



 時は遡ること数時間前。
 ルリへの対策を考え、『SEBAS』に過度な研究は控えるように伝えた後のことだ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 アイスプル(過去)

「──ん、どうしたんだい二人とも?」

 思い付きでいくつかのアイテムを試作していると、二人の少女が俺に会いに来た。
 二人は普人の姿をした……しかし、それだけではない権利を有した者たち。

 二人の名はレムリアとパシフィス。
 それ以外のすべての記憶を有していない、存在が謎そのものな二人なのだが……はて、俺にどういった用があるのだろうか。

「ツクル、行きたい?」

「えっと、行きたいって……」

「■■■■■」

 そう問いかけてくるのは、暗い瞳の少女。
 すでに航路が開かれているレムリアの影響なのか、少女の方のレムリアは、その瞳が黄金色に染まっている。

 つまり、話しかけているのはパシフィス。
 そして問いが意味するものは──

「あの試合、見せてもらった。そして、思い出した。だから今聞く……行きたい?」

「──。ああ、連れて行ってほしい」

「分かった。私は■■■■■の鍵、■■■■■への道を切り開く存在。ツクルを認証し、渡航を許可する」

 右手の甲に触れるパシフィス。
 すると、そこに紋様が浮かび上がり──

  □   ◆   □   ◆   □

 ■■■■■による認証を確認
 称号『■■■■■解放者』は『パシフィス解放者』へ変化します

 座標登録完了──パシフィス世界への渡航が許可されました
 以降、惑星間移動の選択肢にパシフィス世界が追加されます

  □   ◆   □   ◆   □

 知らない情報が流れ込んでくる。
 やはり、レムリア同様に鍵の少女たちには渡航権を与える力があるのか。

「ありがとう……ところで二人とも、あれから『プログレス』は使えるようになった?」

「「ダメ」」

「そっか……ちゃんといずれ、二人も使えるようにするからね」

 今は『超越者』でも使える能力非搭載版を使ってもらっているが、彼女たちは権能を有していないので理論上は使えるはず。

 彼女たちは恩人だ、こんな俺を認めて力を貸してくれている……その恩に報いるためにも、楽しめる環境を作ってやらないとな。


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