虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第二回家族イベント反省会 中篇
まずは第一試合、翔が巨大な竜の姿をした[ドラグキャリー]と戦う映像だ。
「……アイツ、全然全力じゃなかった」
「いちおう言っておくが、本気だったぞ。禁止にしていたのは名前を関した必殺技みたいな能力だけ、それ以外は全部を使って戦ってたんだ……胸を張っていいぞ」
「でも、使われてたら負けてたんじゃ……」
「かもしれないな。だが、結果はこうだ。今度、また戦ってもらえるように頼んでみればいいさ。今度は全力でな」
映像内のショウは、“オーバーブレイブ”によって能力値を十倍に高めていた。
それによって握り締めた星剣の威力が向上し、そのまま勝利を勝ち得る。
もし、全力だったらと思う翔だが、あんまり気にしなくていいだろう。
そもそも、彼ら固有名を持つ個体の持つ必殺技は軍勢にも対抗できるような能力だ。
元より最上位の職業に就いた者たちが、集団で挑むような存在なのだ。
それに単独で挑むのは本来愚行、だが成しえた者だけが英傑となれる。
「……母さんならできそうだったけど」
「ふふっ、どうでしょうね」
「……つ、次は舞だな。ほら、始まるぞ」
魔物同士の戦いはサクッと終わり、お次は狼型の魔物[グラファイス]と戦う舞だ。
いっしょに現れたのは、舞が使役する聖天狼という聖獣ウル。
「そういえばあのウルって狼、いったいどうやって出会ったんだっけ?」
「森で魔物に襲われているウルを助けたの。あの頃はまだ幼体だったから……アレはアレで撫で心地が良かったわ」
「まあ、最初からアレだけデカいわけないよな……そうだ、ここ。凄い数の従魔が居るんだが……実際のところ、いるんだ?」
舞台が破壊され、臨時でルールを設けたあとの話。
舞が上空から無敵化と大量投下で、地面に[グラファイス]の足をつけているシーン。
そのときはルール上、数は100で制限されていたが……間違いなくそれ以上いる。
「最近は、配下もいっしょにっていうことが多くて……千ぐらいかな?」
「千……! あの超人気作の登場数よりも多いな、それ」
「うん、『モンスターパーク』があるから何とかなってる……助かったわ、お父さん」
付随枠の拡張だけなら職業能力でもどうにかなるのだが、それだけの数ともなるとやはり最上位クラスでもないと難しいだろう。
その点、『プログレス』は適性があれば方向性を調整すればどうにかできるからな。
舞の役に立ったようで何より……どこまで増やすのか、逆に興味深い。
「で、瑠璃なんだが……うん、分からん! いちおうアイツ、翔と舞じゃほぼ勝てないだろう性能を持ってたんだけどな」
「あら、運が悪かったのね」
「……まあ、その一言に尽きるだろうな」
なお、当人もとい[アライボウィスポ]に聞いたがよく分からなかった。
要するに、瑠璃の運の良さは彼らに影響を及ぼせるまでに強烈というわけだ。
……これ以上は、どう考えても分からないから思考放棄ということで!
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