虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第二回家族イベント反省会 前篇



 家族や魔物が入り混じるバトルイベント、その勝者であるルリとの戦いに勝利した俺。
 まあ、あくまでエキシビションマッチだったので、賞品などは無いのだが。

 すでに[ログアウト]の処理を済ませ、俺たちは現実に戻ってきている。
 今回のイベントにおける反省などを、しておきたかったからな。

「まあ、こっちにも『SEBAS』が居るのはなかなかに珍しいと思わんでもないが」

《お褒めに与れることを光栄に思います》

「いやいや、そういうところだからな。まったく、誰に似たのやら」

 あるイベントでの報酬によって、こちらの世界でも活動が可能になった『SEBAS』は、現在家族の中でも大人気だ。

 俺だけでなく瑠璃や子供たちの言うことはきちんと理解し、またその内容に関しては俺であろうと開示を禁止すれば分からない。

 ──まさに、絶対的なプライバシー機能付きだからな。

「──アナタ、お待たせ」

「いや、今来たところ……じゃなくて、普通に準備も終わったところだから大丈夫だ。二人は……あっ、ちょうど来たな」

 翔と舞も席に着き、全員が揃った。
 俺は『SEBAS』に指示をし、部屋の照明を操作……プロジェクターが映像を投影し始める。

「えー、それじゃあ。今回のイベントが無事に成功したことをお祝いしまして──乾杯といきますか、乾杯!」

『──乾杯!』

「つきましては、今回のイベントの映像をダイジェストでお送りするぞ。みんな、いろいろと思うところはあるだろうが、それは追々確認していこうか」

 今日は少しだけ夜更かしを正式に認め、お祝いすることにする。
 俺も正直、瑠璃との戦闘(逃亡戦)の影響でハイテンションのままだからな。

「最初はやっぱり、歓迎の花火からだな。それから、風兎とエクリによるデモンストレーションをやったわけだ」

「そういえば父さん、あの人が使っていたの俺のと同じだった気がするんだけど……」

「『コレクトキャプチャー』っていう能力でな、『プログレス』ならどんな能力でも再現することができるチート級能力だ。なお仕様により、それは本来の発現者と同等の成長度合いまで模倣できるぞ」

「うげぇ……それ、ズルくない?」

 まあ、エクリは特典まで注ぎ込んだ超レア個体だからな。
 そのうえ存在の方向性を事前に調整していたので、ある意味必然と言えよう。

「なんて言うんだっけ。一番最初の試作品には、通常以上に高性能な材料を使うようなこと。まあそういう感じで、スキルで用意できる限りの最上品を使っているからな」

 テストモデルだかプロトタイプだか……ともあれ、エクリが強いのは必然だ。
 さて、ここからは家族の活躍を流そう、恥ずかしくてもしっかり観ようぜ!


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