虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第二回家族イベント後篇 その18
ようやくルリに、致命的なダメージを与えることができた。
撃った弾丸の名は『死導の絶弾』──当たるが最後、対象を死の因果へ導く代物だ。
ルリ自身の『ミス・フォーチュン』、願望機によって極限まで強化された『死天』謹製のアイテム……そして、俺の持つ『称号』の効果などもあって、死の因果が届いた。
命中したのは肩、心臓などであれば即死なのだが……ルリの運が抵抗して、死ぬにしてもギリギリまで時間を引き延ばしたようだ。
「ふっふっふ、三分だ。三分で決着がつくことだろう」
「な、なんだって!?」
「……とまあ、ここからは形勢逆転だ。俺を倒したくば、全力で掛かって来るが良い! 死なないだけが、取り柄だからな」
「ふふっ、そうね……なら、私の全力を使おうかしら──『■■』!」
ルリの口から、最後に聞こえたナニカを認識することができなかった。
三分という限られた時間が、彼女に決断をさせてしまったらしい。
おそらくそれは、ヴァルハラでヘラクレスも使っていたアレなのだろう。
その証拠に、ルリから膨大な量の神気が溢れ出していた。
神気は神威を示し、この場を覆う。
ルリの冠する命運の権能によって、物理法則を超越した空間を創り出した。
「これは……」
「……何なのかしら?」
お決まりの台詞を使うルリ。
だが仕方あるまい、普段から苦戦しないルリがそんな奥の手みたいな能力を使うわけが無いのだから。
初めて使われたであろうソレは、歓喜するように俺の世界を塗り潰していった。
内部では俺の【救星者】としての権限は剥奪され、ただのクソ雑魚一般人となる。
そして何より、せっかく下げられていたルリのシステム的なLUC値も元通り。
そのうえ俺のLUC値は時間経過で下がっていくし、ルリは場を支配している。
《──旦那様!》
「うおっ、急に隕石!?」
「あら、偶然ね」
「……今まで一回も、この星にそんなこと起きたこと無いんだけどな」
偶々、偶然降ってきた隕石。
アイスプル初の隕石が、まさかこんな時に訪れるとは……さすがはルリといったところだろうか。
地面が凹むほどの強力な一撃、さすがに俺もそれを受け切るのは難しいな。
三分を逃げ延びるため意識を切り替え、結界による動き補正も逃亡に合わせてもらう。
「うふふふっ、逃げるのね」
「逃げるが勝ち、三十六計逃げるに如かずというだろう! というか、今のルリに勝つ方法ってあるのか!?」
「うーん、少なくとも私は思い浮かばないかしら?」
「逃げるしかないだろ!」
おそらく、俺が一歩でも足を動かそうと自らの意思を持ったら、それだけで死ぬ。
今は『SEBAS』が干渉してくれているお陰で、それがどうにかなっているだけ。
だって、操ってもらっているはずなのに、まれに躓くようになったし。
……俺という存在そのものにまで、因果を向けられるようになってやがる。
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