虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
第二回家族イベント後篇 その06
ショウがついにルリへ攻撃を届かせた。
斬撃を弾丸と化し、壁となる白竜を避けての一撃……不意打ち感が否めないが、それでも一発は一発だ。
もちろん、賭けをしていたわけでもないので、それで勝利することも無い。
だが──無傷のまま勝たせはしない、その意志は伝わる。
≪ルリ選手、どうやら回復魔法は使わないようですね……こういった試合の場合、基本的に回復魔法や自前のスキルなどであれば仕様が許されているはずですが≫
《おそらく、アズル選手が己に課した制約のようなものでは無いでしょうか? 自身には使わない、そう制限することで他者への回復効果を強めているのかもしれません》
≪な、なるほど……いちおうでも聖職者を嗜む身としては、大変参考になる話ですね≫
《──何より、回復魔法を必要とするほどの重傷を、これまで負ったことが無いのかもしれませんね》
弾丸が貫いたのはルリの右肩。
しかし、その跡はとうに消えている。
それは何故か……彼女の種族【星宝獣】の再生力が、尋常では無かったからだ。
《アズル選手は【星宝獣】、その力は星のエネルギーすら宝石に溜めることができます。平時より生命力を溜めておけば、必要に応じて再生力を高めることもできるでしょう》
元は魔力を宝石に蓄積することができる、【宝石獣】という種族のはず。
だが進化を経ることで、蓄積できる力は魔力だけに留まらなくなった。
生命力を蓄え、何かあればそれを使い瞬時に回復すれば良い。
事実、ショウの攻撃はほぼ無かったことにされている。
《ですが、ショウ選手の攻撃には星のオーラが纏わせられておりましたので、完全には治し切れていないはずです。そして、難度も同じ攻撃を受ければ、再生能力も機能しなくなるでしょう》
≪そういうことですか……つまりショウ選手もそれが分かるからこそ、まだ諦めていないのですね≫
弾丸化の斬撃を何度も放ち、今度は白竜を一気に攻め立てていく。
そちらにはルリの回復魔法が通るが、少しずつ星の力によって回復が阻害される。
やがては魔力を受け付けなくなり、白竜は地面へと墜落。
そのまま動かなくなり、魔力は空気へ還元されていった。
残すはルリただ一人……もちろん、彼女が本気を出すのであれば、何度でもそして何体でも白竜を生み出すことはできるだろう。
だが、俺には分かる。
彼女の矜持──もといモチベーション的にそれはやらないと。
俺の予測通り、ルリは白竜を再度生み出すことなく戦いの場を地上に戻した。
その手に握り締めた短剣も、いつの間にやらルリの神聖な力で強化されている。
──ここからが最終戦なわけだ。
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