虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
第二回家族イベント後篇 その05
空を駆ける剣士が挑むは、神聖なる竜の殺害──なんともファンタジー染みた光景が、ここアイスプルの闘技領域で繰り広げられていた。
幾千もの剣で構築された檻の中、自由な羽ばたきを抑制された白竜は息吹を吐く。
対するショウは握り締めた竜殺しの剣を使い、息吹を切り裂き接近を試みる。
≪ショウ選手、星の輝きを纏った剣で息吹を切り裂きました! さすがにそれを見たルリ選手、再び光線の射出による攻撃を始めています。しかし、まだ準備ができていなかったのか、光線はたった一本だ!≫
《ショウ選手、それを闇属性を付与した剣で斬りました。どうやら“チェインソウルズ”で獲得した属性剣を用いたようですね》
ショウのパーティーメンバーとの絆、その恩恵の一つだ。
その彼女が持つ魔法属性分、ショウは剣に属性を付与することができる。
所持する魔法の属性にばらつきがあると、成長しづらくなってしまう冒険世界の理。
それでもその彼女は、複数の属性を操ることを諦めず成長を続けた。
不遇だった彼女と共に歩み、今に至るまで支え続けたからこそ、ショウは彼女の得た力の一部を借り受けることができている……まさに、主人公って感じだよな。
《ショウ選手が借り受けられる属性は、基礎属性と派生属性で合計九つ。融合属性などは対象外とされているため、それらの付与はできません》
≪あくまでも、絆の力ですので。本当にそれらを必要とするのであれば、彼女自身に付与してもらうわけですね──おっと、ここでルリ選手が動く! 魔法で武装を着けた白竜と共に、ショウ選手へ突貫だ!≫
神聖な竜がこれまた神々しい装備を着装されると、首の辺りに乗ったルリが短剣を核に創り上げた槍を持ってショウの所へ急降下。
竜殺し+闇属性の力で白竜を……と思ったが、ルリの力も強まったようで、鎧の部分に弾かれてショウもまた墜ちてしまう。
≪ルリ選手、ここで魔法を……これは、鏡でしょうか?≫
《“光折鏡”と呼ばれる魔法を改良したものでしょう。魔法によって生み出された光を、ある程度望んだ方向へ屈折させるというものですが……あのような現象を起こすことは、通常の術式ではできません》
攻撃の手を緩めないルリは、宙に無数の光で出来た鏡を展開。
光線を当てると、光が乱反射してショウに襲い掛かっていく。
途中で増幅でもされているのか、鏡を通過するたびになぜか光の威力が強化される。
ショウも剣の一本を闇属性の剣に切り替えなければ、対抗できなくなっていた。
≪だがショウ選手、諦めません! 地面に着地したその瞬間、闇属性の付与を解除。代わりに異なる輝きが剣に宿ったと思えば、斬撃が弾丸と化してルリ選手へ命中だ!≫
それでもショウは、活路を切り開こうと足掻いている。
弾丸化の斬撃、それはショウのパーティーメンバーの一人である銃使いの恩恵だろう。
そうすることで、速度と貫通力を上げることができるようで。
何より斬撃が圧縮され、攻撃の範囲も狭まる代わりに防がれづらくなる。
白竜を器用に避けた弾丸によって、ルリは初めて負傷するのだった。
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