虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

第二回家族イベント後篇 その02



 ついに始まったショウ対ルリ。
 カウントが0になった瞬間、舞台上で起きたのは二色の光によるぶつかり合いだった。

≪ショウ選手、武技による急接近で障壁へ攻撃を──っと、これは!?≫

 剣にオーラを纏わせ、“速断ソニックスラスト”と呼ばれる武技で障壁に向かって攻撃。
 ショウの職業、そして星剣自体が生み出すオーラも相まって、武技の威力は向上。

 障壁は耐えた──だが、それは一瞬だけ。
 神の力を以ってしても、ある条件を満たした星の剣には敵わなかった。

《ショウ選手の持つ剣は、旦那様の打ち上げた星剣。そのため、アイスプルで用いる際は特別な効果を発揮します──耐久無視、それが『地星硬剣[フライハット]』の持つ真の力です》

 その剣の銘は、かつて俺がショウのために初めて打ち上げた一振り。
 ショウに剣を何本も送っているが、俺はそれをたまに返してもらって改良していた。

 想いの籠もったアイテムは、再度手を加えることで著しく伸びることがある。
 いわゆる付喪神、ショウが大切に使っていたからこその結果だ。

 耐久無視と『SEBAS』が言ったその効果もあり、ショウはルリの障壁を破壊。
 そのまま剣士の高い敏捷力で攻撃を……といったところで、ルリも動きを見せる。

≪ここでルリ選手、腰に提げていた短剣を引き抜きました……あっ、俺の創った儀礼用のヤツだな≫

《そして武技“後退突バックスタブ”を利用し、上手く回避しましたね。ショウ選手も追撃しますが、アズルルリ選手は短剣を触媒にして魔法を発動させました》

≪……えっ? えっと、ルリ選手が増えましたね。こ、これは……幻覚でしょうか?≫

《はい。おそらくは“幻光ミラージュ”系統の魔法、そこにアズル選手の神気を交えることで、生み出される幻覚を限りなく本物に近いレベルに昇華させていると思われます》

 無数に現れたルリ。
 ショウはすぐに魔法を発動させていた地点に向かい、攻撃をするが……そこに居たルリは蜃気楼のように消えてしまう。

《おそらく、事前に異なる魔法で姿を消していたのでしょう。もしかすると、あの中に本物は居ないのかもしれませんね》

 本物のルリがそうしたからだろう、短剣を触媒に再び魔法を発動。
 多方面から放たれる光線、しかしショウはそのどれか・・・が本物だとは思わなかった。

 どれか、ではなくどれも・・・
 すなわちすべてが本物だとでも言わんばかりに、剣を光線すべてに当てる──するとそのすべてが、魔力を霧散させ消えていく。

 幻覚だから消えたのではない、魔法の核を打ち砕いたから消えたのだ。
 それはつまり、ショウの読み通り光線全部が本物だったことを意味していた。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品