虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第二回家族イベント前篇 その16



 準決勝第一試合、ショウ対[ラヴィンド]の戦いが始まった。
 ショウは開始早々、『ブレイブソウル』を発動して能力値を強化する。

 前回同様、調整された能力値はすべてを対象として強化された。
 そして、“チェインソウルズ”によってさらに強化は強まる。

≪ですが、今回はそれだけではありません。ショウ選手の剣から放たれるオーラ、それは星剣の輝き! 星剣の担い手であるショウ選手は、その恩恵を受けることができます≫

 ショウの職業は【剣星】、そして与えられた二つ名と称号は『剣皇』と『闘天』。
 職業効果で星剣を持てば強くなり、一つ目の称号が剣に関わるすべての効果を強化。

 そのうえで、休人にのみ与えられた『天』の称号が、物理攻撃を防御無視にする。
 休人最高のアタッカー、ショウにだけ与えられる恩恵だな。

≪固有種である[ラヴィンド]選手に対し、ショウ選手はさまざまな強化を同時に行うことで対抗するようです。『SEBAS』さんは、このやり方をどうお考えですか?≫

《人族である以上、[ステータス]以上のスペック差は覆しようがありません。それゆえに人族には、職業や装備といった概念で圧倒的な強さに対抗するのです》

≪正攻法、というわけですね……そう考えると、今さらながらルリ選手がどれだけ特殊なのかが分かりますね≫

 ルリが[アライボウィスプ]に勝ったあのやり方、真似できる者など本当にさまざまな世界を探しても五指に入るほどしか居ないはずだ。

 アレもアレで、現人神という意味では人族の可能性の一種ではあるが。
 だが、それは本当に選ばれた者のみが取れる選択──常人にはほぼ不可能だ。

 なので[ステータス]に記載される恩恵を十全に使い、人々は障害に挑む。
 人のスペックを職業や装備で補い、数でさらに足りない部分を埋めて戦うのだ。

 ──が、当然試合は一対一。
 たとえ[ラヴィンド]の能力に制限が掛けられているとしても、やはりただ力を持っているだけでは勝てない。

≪ショウ選手の『ブレイブソウル』は、それそのものに能力値の補正はありません。ですが、“チェインソウルズ”の発動対象が増えれば増えるほど、その補正がどんどん増えていきますからね……おっと!≫

《[ラヴィンド]選手、暴風を纏い加速しました。ショウ選手は動体視力を強化して見切りをしていますが、[ラヴィンド]選手の加速は今や音速の域に達しています》

≪敏捷力が高ければ、それも可能ですしね。さすがにショウ選手の能力値も、そこに追いつくことは無いようです……が、上手く対応していますね≫

《どうやら先読みで動きを予測し、乗せる形で当てようとしていますね。少しずつ、その精度も上がっているようです》

 音速を超える動きに剣を当てる、言うのは簡単でもやるのは難しいはず。
 それでもショウはそれをやろうとしているようだ……さぁ、限界を超えろ!


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