虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第二回家族イベント前篇 その15
第四試合の勝者はやはりルリ。
彼の天才ジンリですら、運が介入する余地があれば必敗だと認める彼女の天恵は、固有種にすら通用するようだ。
なお、それでも冒険世界において、ルリは固有種を率先して狩ったことは無い。
彼女が心から欲しないからか、あるいは出現に伴う被害を恐れてかは不明だ。
なので、特典の保有数は0ではないがそこまで多くも無い。
……逆に言うと、無くても困らないぐらいにできることが多いわけだが。
≪さて、これから準決勝に入るわけですが、一部ルールの見直しがあります。以降の試合において、床の剥がしはできません。転落による敗北は、あくまで枠の外へ出た場合のみとします……床の下も床扱いになります≫
第三試合で起きた、[グラファイス]による床捕食事件。
まあ、他の参加者に進んでやる者は居ないのだが……いちおう伝えておく。
進んでやらないだけで、できない選手は誰一人としていないのだ。
準決勝では、一回戦とはまた異なるやり方で戦ってほしいからな……特にマイ。
≪──そして、従魔を使役して戦うマイ選手にお知らせです≫
アナウンスが個人を指名すると、目をパチクリとしている光景が映る。
うん、俺も意地悪じゃないのでサクッと言うべきことを伝えよう。
≪協議の結果、次の試合において展開できる従魔の数に制限は設けません。こちらはルリ選手も了承済みです。思う存分、全力をお揮いください≫
そう、このままだとマイはあっさり負けてしまうので、いわゆるテコ入れだ。
マイも、そしてルリ自身も力の差については自覚しているからこそできること。
それでも確実に勝てるとは思えない辺り、ルリの豪運は恐ろしいのだが。
逆に言えば、絶対に勝てないわけではないのだ……その道のりは非常に困難だけども。
◆ □ ◆ □ ◆
≪──では、定時となりましたので、これより準決勝第一試合を開始致します!≫
魔物たちの叫び声を聞きながら、赤と青のコーナーから転送陣を展開。
紹介文は一回読み上げたので、そこまで細かいことはもうしない。
≪ショウ選手と[ラヴィンド]選手、今同時にリングイン! 両者舞台の上で相対し、言葉を交わしております≫
具体的な内容は言わないが、正々堂々的なことを言っている。
魔物は基本弱肉強食、勝者こそが正義みたいなヤツもいるからな……。
ショウもそれに頷き、剣を構える。
それはただの剣ではなく、星の力を宿す星剣──準決勝を勝ち進むためには、必ずやその力を使うだろう。
≪さぁ、それではカウントダウン!≫
皆で数字を数えている間も、選手たちは始まりの瞬間に備えている。
そして、0を告げたとほぼ同時──舞台の中央で衝撃が発生した。
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