虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
第二回家族イベント前篇 その13
マイが切り札のうち一つを使った。
従魔の無敵化による特攻によって、宙に居たはずの[グラファイス]を地面に押し付けることに成功したのだ。
魔物の中に、攻撃が当たりさえすれば吹き飛ばすことができる能力があるのだろう。
無敵によってそれが命中、抵抗はできないで少しずつ落ちていき……ということか。
圧倒的な質の聖天狼、膨大な量の低位階な従魔たち……彼らを使い分け、マイは単独で固有種を負かしたわけだな。
≪さぁ皆さん、マイ選手と[グラファイス]選手に盛大な歓声をお願いします!≫
拍手をする人数より、声を上げる個体数の方が多いのでアナウンスもそれに準じる。
マイはこれで、準決勝に進出だ……そして第四試合──彼女の出番となった。
「……『SEBAS』、どうだ?」
《[アライボウィスプ]、問題ありません》
「…………対戦を望んでいるし、さすがに途中棄権はしなかったな。ふぅ、これなら試合ができるな」
試合を始める前に、どうしても確認しなければならなかったこと。
それは対戦相手が、粋な計らいで辞退していないかどうかである。
いかに『超越種』と『災凶種』が軒を連ねていても、彼女の御業には敵わない。
戦闘を始める大前提、それすら満たせるかどうか分からなくなるほどだ。
かつて、そんな事態が本当にあった。
創作物でネタのように描かれる、対戦者の立て続く棄権……なんて事象を現実に引き起こすことができてしまう、それこそが──
≪さぁ、そして第四試合! 赤コーナー、彼女こそが神! 崇め奉れ、信じる者は救われる──命運神アズル様、いいや女神ルリ様こそが私たちの救いの神!!≫
今まででもっとも無駄遣いな演出を実行。
空は曇天、しかしだんだんと雲が動き──光の柱が空から降り注ぎだす。
そして転送陣から現れるルリに、その光がちょうど当たる。
光はルリが得た神性に呼応し、より強い輝きを放つ……うん、完璧だ。
なお、怒ってはいないのだがかなり恥ずかしがっている模様……可愛い!
逆に子供たちは…………そりゃあ、母親にそこまで過剰な演出が施されればな。
≪青コーナー、何度でも諦めない不屈の魂。その身が燃え尽きようと、第二第三の私が必ず現れる。止められる物なら止めてみせよ。さすれば、無限が貴方を襲うことになるだろう──[アライボウィスプ]!≫
現れたのは小さな火の玉だ。
しかし、その見た目とは裏腹に内包するエネルギー量は膨大である。
果たしてルリはどのようにして勝つのだろうか……うん、勝利は確定だからな。
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