虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
第二回家族イベント前篇 その10
第三試合、[グラファイス]VSマイの試合が始まった。
マイの職業は【調教師】由来のもの、故に戦闘は本人では従魔によって行われる。
「──来て、ウル!」
本来、調教師という職業そのものに従魔を別の場所から呼び出すスキルは存在しない。
だが、アイテムによって擬似的に召喚、送還することはできる。
それを可能にするのは、『封石』と呼ばれる特殊な鉱石。
職人がそれを加工することで、さまざまなモノを内部に封じられるようになる。
従魔師であれば、まさに従魔を入れておくために使う。
召喚師の従魔との違いは、死んだらその個体に次は無いことぐらいだ。
マイが使用した封石は、一般人が手に入れられるソレとはまったく別物。
封石の中でも聖属性を封じることに特化した逸品、しかもかなり巨大だ。
売れば巨万の富を生み出すであろう封石、マイはそれを実用品として用いている。
中に封じられた存在──そのサイズでしか格納できない従魔を押し込んでおくために。
≪おーっとこれは! マイ選手、なんと呼び出したのは聖獣だ! 相手と同じく狼型、しかし……さすがはうちの愛娘です≫
《『聖天狼』、設定ポイントは上限いっぱいの強力な個体です。天候すらも自在に操ることができ、大空を自由に駆ける狼として一部の地域では神として奉られております》
≪そんな存在とどうして契約をしているのか気になりますが、それはマイ選手の描いた物語ですしね。今は戦闘に集中しましょう≫
そんな聖天狼であっても、固有種として星から恩恵を授かっている[グラファイス]に単体で勝つのはほぼ不可能だ。
彼らは言うなれば徘徊型の特殊ボス。
普通のボスよりも高い能力値を有し、そのうえで何らかの異様な能力も持っている。
従魔は主の一部、そんな仕様だからかそのスペックはたとえ聖獣であっても、個であることを条件に選ばれた固有種に比べるとそこまで高くない。
ましてや、アイスプルの住民はそのほとんどが『超越種』か『災凶種』。
ネームド種やユニーク種ならともかく、スペック差も尋常ではないだろう。
≪性能では圧倒的に劣っている現状ですが、それを覆すのが調教師系の職業の役割です。マイ選手、さっそく支援を行っています≫
《マイ選手は【調律姫】、通常の【調教師】と比べても高度な支援が行えます。分かりやすいたとえですと、支援内容の細かな調整が行えます》
≪いわゆるパラメーターを弄る、という感じですね。速度を高めるため、本来であれば敏捷力を強化します……ですが、マイ選手であれば脚力の強化を図ったり、他の強化値を敏捷に回すといったやり方ができるわけです≫
そうして強化を図り、[グラファイス]を部分的に超える力を得ようとしている。
それで勝てるか、それはこれからの戦いで証明してくれるわけだ。
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