虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第二回家族イベント前篇 その07
固有個体『■■竜[ドラグキャリー]』。
乗せた/載せたモノを強化する能力や、人族の兵器やアイテムを運用することができる能力などを持ち得た竜種。
彼が放つ銃弾は最硬と呼び声高い完結鋼すら貫き、砲弾は辺り一帯を更地にする。
己の強化では無く、乗せた/載せたモノの強化にリソースを運用した結果と言えよう。
そんな[ドラグキャリー]なので、本来の戦闘スタイルは現在とやや異なる。
あくまで個人戦なイベントのため、銃火器のみでの戦闘を求められているだけ。
これまでの記載からも分かるように、強化されるのは『乗せた/載せた』モノ、生物や無機物など関係なく、[ドラグキャリー]が認めたものであれば何でも対象となる。
──逆に、その一点を除けば彼に設けられた縛りは、能力値の制限程度だった。
ショウが単独でやり合えているのは、ひとえに彼自身の才能とも言えよう。
□ ◆ □ ◆ □
ショウが能力値では優っていても、スペック的に[ドラグキャリー]の方が上。
だからこそ、“チェインソウルズ”に打開策を見出している。
≪おっと、これは……ショウ選手の剣に雷が宿った! しかし、武技ではありません……解説の『SEBAS』さん、これは?≫
《ショウ選手の“チェインソウルズ”の効果ですね。彼のパーティーメンバーの一人、魔法使いの方との契約により、魔法剣の真似事が可能となっております》
≪なるほど。たしか、ショウ選手はバランスの良いパーティー構成だったはず……魔法使い、ヒーラー、スカウトなど。つまり、彼らの力の一部を使えるのですね≫
《そうですね。“チェインソウルズ”の熟練度が上がれば、更なる能力や一度での同時発現数などにも変化が生じるでしょう》
雷魔法を剣に付与すると、ショウの動きがこれまでより速くなった。
どちらかというと、先んじて動くという感じがしたので脳の活性などだろうか。
要は剣に属性を付与するだけでなく、その属性に合わせた恩恵を同時にショウにもたらす……それがその魔法使いの少女との契約により、得たものなのだろう。
≪[ドラグキャリー]選手、ついに接近を許してしまった! ショウ選手は……おっと、これは逆鱗を狙っている!≫
《旦那様の星剣、そしてショウ選手の技量があれば刺し貫くことも可能でしょう》
≪すぐに迎撃を行う[ドラグキャリー]選手ですが、ショウ選手もここでラストスパートだ! 全力全開、“オーバーブレイブ”で駆け抜けて──今、トドメの一撃!≫
優っていた能力値を、一気に十倍にしての会心の一撃。
クリティカルなダメージも入り、苦悶の声が上がり──[ドラグキャリー]が倒れる。
≪これにて、第一試合終了! 勝者──ショウ選手!≫
この結果に人も魔物も関係なく、多くの歓声が上がった。
結界が一時的に消えれば、二人の状態も元通りになる。
一言、二言言葉を交わしたあと、二人は舞台から退場する。
うんうん、さすがはショウだ……次の試合も楽しみだな。
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