虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第二回家族イベント前篇 その06



 ショウが発動した“チェインソウルズ”。
 それはこれまでの絆が物を言う、まさに主人公チックな能力と呼べる。

 メタ的な説明をするなら、一定以上の好感度を持つ者の数だけ『ブレイブソウル』の強化倍率を高めていく。

 しかも、契約という特殊な誓約もしていると倍率がさらに上がるうえ、ショウと契約対象に特殊能力が発現するというとんでも機能付き……本当、主人公っぽい能力である。

  □   ◆   □   ◆   □

 移動要塞みたいな[ドラグキャリー]に対して、ショウは絆の力を頼るようだ。
 そりゃあ星の剣とかいろいろとあるだろうが、初戦から出し切るのは愚策だろうし。

《ショウ選手の『ブレイブソウル』は、その性質上発動そのものを妨害することは難しいです。能力値で劣れば無効化できるでしょうが、それでは純粋にショウ選手とのスペック差が埋まってしまいます》

≪そうなると、剣技を得意とするショウ選手が有利になる……ということでしょうか?≫

《いえ、そうとも限りません。ですが、少なくとも優った能力値に関することで、不利になることは無くなるでしょう》

 レベルも能力値も、人と竜とでは1の差が示す隔てりには違いが存在した。
 それでもレベルに比べれば、能力値の方は高い数字であればあるほど差が縮まる。

 ショウは剣を持っている時に限定されるだろうが、西洋剣で巨岩を砕いたり弾丸を追いかけるぐらいのことができるはずだ。

 能力値で優るということは、そうした人の限界を超えた挙動で上に立てるということ。
 つまり、『ブレイブソウル』が効いても効かずとも、能力値で超えればそれで充分。

 ──優った能力値が、体格差などの劣勢の要因を取り除いてくれるのだ。

≪ですが、[ドラグキャリー]選手も黙って負けるなどという行為はしないようですね。銃火器からおーっとこれは、なんということでしょう! なんと、光線が飛び出した!≫

《旦那様のご用意した、光学兵器ですね。燃費の関係でこれまでは起動を控えていたようですが、どうやらそうも言ってられなくなってきたようです》

 一発一発の間が存在する銃や大砲に対し、光学兵器はそれらをなくすことができる。
 維持すればその分だけ、身力を消耗するのが与えた兵器の問題点だが……短期決戦か。

≪本来のスペックでは無い以上、こう選ばざるを得ないということですね≫

 そう、[ドラグキャリー]だけじゃなく、参加した魔物たち全員にある制限が課せられていた。

 形はそれぞれ別なのだが、要は限界を超えれば一人でも倒せるほどの弱体化。
 本来、それは人族の中でも選ばれし者のみに許された偉業。

 ルリはともかく、ショウやマイたちではさすがに『超越種スペリオルシリーズ』や『災凶種ディザスターシリーズ』に至った彼らの全力にはついていけない。

 この大会は元より、ショウでもそこまで経験したことの無い劣勢を体験してもらうべく用意していたイベントなので、魔物たちもそれを考慮したうえで参戦を望んでいた。

 ──だからこそショウ、お前のその力で限界を超えてみせろ(親バry。


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