虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

第二回家族イベント前篇 その05



≪0! ──それでは、試合開始です!!≫


 合図と共に、ショウと[ドラグキャリー]は攻撃を開始。
 試しのつもりなのだろう、片や空飛ぶ斬撃で──片や背中に載せた砲撃だ。

 それらは同時……いや、中央よりかは少し[ドラグキャリー]寄りの場所で衝突。
 周囲に爆発の余波を散らしながら、攻撃の威力を示していた。

「──『ブレイブソウル』!」

 ショウは続いて、エクリ同様というか本家『ブレイブソウル』を発動。
 相手は竜種、そのため能力値の差も大きいため、すべての能力値が一気に跳ね上がる。

≪ここでショウ選手、『ブレイブソウル』を発動しました! ですが……どうしたことでしょう、[ドラグキャリー]選手の迎撃に対応し切れていません!≫

《[ドラグキャリー]選手に搭載されている武器は、そのすべてが能力の効果対象に含まれております。背負った物を強化する、単純ゆえにああいったことが可能なのです》

≪なるほど、銃ならば飛ぶ速度や貫通力が増すわけですし、大砲なら火力や効果規模が増大する、といったところでしょうか?≫

《本来であれば、住まわせた魔物の強化などに使われる能力だったのかもしれません。ですが、[ドラグキャリー]選手は武器をその対象として選びました。果たしてその選択が吉と出るか凶と出るか……見物ですね》

 解説役は『SEBAS』にお任せし、実況担当をやっている俺。
 語り合った通り、[ドラグキャリー]の能力は搭載強化とでも言うべきものだ。

 竜騎士が乗れば対人強化、魔物が乗れば対魔物強化、そして銃火器が載れば兵器強化と幅広い恩恵をもたらすのが搭載強化である。

 ショウの斬撃が速く届いたのは、職業の補正と星剣の力があったから。
 当人が駆けて近づくというのであれば、搭載された兵器が容赦なくショウを襲う。

 現状、唯一優っているのは速度ぐらいだ。
 だがそれも、大量に載せられた銃火器による面での制圧によってあまり意味を成さないでいる。

≪だがショウ選手、まだ諦めていません。銃弾と砲弾の雨を見切り、[ドラグキャリー]選手に向けて突進だ!≫

《剣にも防御・回避系の武技はあります……ですが、ショウ選手のそれは、純粋な技巧によるものですね》

≪こちらでの戦闘経験が、それを可能にしているのかもしれませ──おっと、ここであの能力を使ったか!?≫

「──“チェインソウルズ”!」

 ショウがこれまで築いてきた絆の証明。
 たとえこの場に居らずとも、紡いできた絆はたしかにショウの力となる。

 ──さぁ、ここからが本番だ(親バカ)。


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