虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第二回家族イベント準備 その09
無事、タクマに仕事の押し付けは済んだ。
……現実でどうせ愚痴を聞いているのだ、それぐらいはやってもらわないと。
情報戦云々をタクマに語った俺だが、その辺りのプロが暗躍街にはもう一人居る。
居るのだが…………うん、彼に関しては会いたくない。
彼──【情報王】は暗躍街を統べる者の一人であり、より高みを目指している。
暗躍街、そして闇厄街を支配し、その先にある案役街を手に入れようとしていた。
「そうか、あの苦手意識はジンリに似ているからなのかもな。ただ、アイツと彼とだと人の扱いに違いがあった。生まれた世界の違いなんだろうな」
《旦那様、よろしければその話、詳しくお伺いしてもよろしいですか?》
自分の思考を見つめ直していたら、なぜか『SEBAS』が反応してくる。
あまりないその言葉に、俺も興味が湧いたので話してみることに。
「そうだな……【情報王】もジンリも、根本的な部分は同じだと思うんだ。自分が一番であり、より高みを目指す。そのために手段は選ばず、苛烈に容赦なく他を巻き込む。ここまではいっしょだと思う」
《では、相違点とはいったい》
「さっきも言ったが、環境だな。第一にこの世界は弱肉強食、それも物理的な被害が多い世界だ。だから対応も、相応のものになっていく。だけど、現実は……まあ、その分腹黒いからな、やり方も少し変わっていく」
《では、そこが一番の違いだと?》
まあ、普通ならそう至るんだけども。
……けど違うんだよな、やっぱり一番の理由はアレである。
「一番は……うん、ルリだ。アイツがどういう経緯でネトゲに手を出したのかは知らんけど、その出会いが一番の問題だと思う。だからアイツは、はっきり認識している。自分ではどうにもならないものがあると」
それは自然災害と同じような認識だろう。
いちおうの防災はできる、しかしそのすべてが報われるわけではない……抗いようのない理とも呼べるナニカがあると。
「だからアイツは、徹底的にルリが過剰な反応をしない程度の策略に抑えている。そうでもなきゃ、俺はもう捕まっているだろうし」
《……それは、私が居てもでしょうか?》
「向こうは『SEBAS』を知らないしな。知っていたら対応を変えるかもしれないが、その仮定ならやってくるだろう。けど、その途中で当然気付く。そうなったら、やり方を変えてくるだろうな」
《なるほど》
ややホッとした様子だな。
自分が頼りにならない、そう言われたように思えたのかもしれない。
だが安心してほしい、はっきり言って俺は『SEBAS』が居なければ(物理的に)何もできないぐらいの(身体スペック)がダメ人間なのだ。
──むしろ、嫌がっても集るレベルで執着しているからな!
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