虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
第二回家族イベント準備 その08
暗躍街 中央区
慣れた足取りで向かうのは、周囲と同じ形式のありふれた家屋の中。
ただし、そこに住まう者は休人の中でも、一、二を争う情報収集能力を持っている。
「──というわけで、情報プリーズ」
「……というわけで、俺もお前を殴ってもいいか?」
「おいおい、いきなり何も説明せずに事を進めようとするなんて、常軌を逸しているな」
「その台詞、そっくり返してやるついでに殴ろうか?」
いつものように軽口を叩き合った後、さも何も無かったかのように話を戻す。
彼──タクマに掛かれば、大抵のことはこの場で情報を得られる。
「まず一つ、ジンリ──」
「…………帰ってもらっていいか?」
「断る。ジンリに対して、欺瞞情報を至る所でバラ撒いてほしい。期間はそうだな……一週間ぐらい」
「……また、厄介事か?」
俺の真剣さ溢れる表情に、ヤツもまた理解したようだ……俺の話が、世界で一番重要な話であることを。
「ああ、そうだ…………家族で過ごすんだ」
「………………はっ?」
「家族で過ごすんだ。ジンリのことだ、必ずこの期間に手を打つはずだ。俺は家族サービスに全神経を費やすし、普段の警戒網も一時的にゼロになる。だからこそ、お前の助力が不可欠なんだ!」
「……ああ、お前ってそうだったな。前回はたしか、そのためだけに犯罪クランを丸々崩壊させたんだっけ?」
えっと、たしかそれは……ああ、ルリ騎士団といっしょにやったヤツだな。
男だらけのむさ苦しい連中だったので、対男性特攻の攻撃でサクッとやった気がする。
ルリの現人神としての格も高まり、その恩恵を強く受けた騎士団もさらに強化されている……音に聞く彼女たちの活躍は、今や英雄の伝説染みたものになっているしな。
「ああいったことなら、暴力で捻じ伏せればいいんだけどな……ジンリのヤツ、絶対搦手だろ? 自分の星に引き籠もれる俺はともかく、パーティーを組んでるショウだったり、宗教やってるルリなんかに迷惑が掛かるし」
「パワーワードだらけだな……自分の星、宗教やってるだの。そういう情報操作だけって言うなら、簡単なんだが」
「ジンリがその程度で勘弁してくれるわけないだろ。徹底抗戦、それこそ情報戦をやらないとダメなんだよな──というわけでユー、やっちゃいなヨー」
普段から情報をさんざん与えている以上、払う金など不要だ。
しかし、やる気を出してもらった方がいいわけで──報酬は用意してある。
「ここに、一つの宝珠があります」
「…………物凄く嫌な予感がするんだが。いちおう聞くぞ、これは?」
「そして聞いた相手を発狂死させるアイテムと、それ専用の防音結界を展開する宝珠だ。聴覚経由な以上、通信でも相手を殺れる便利なアイテム──」
「ちょ、おまっ……!?」
強引にタクマにそんな厄介極まりないアイテムを押し付け、部屋から逃走。
中で怒鳴っていたが……まあ、きっと仕事はやってくれるだろうな。
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