虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第二回家族イベント準備 その06
アイスプルに来たがる『騎士王』を誤魔化しながら、交渉を進めていく。
対価として、ある程度のことはやるつもりだ……その件も相談するんだけどな。
「いちおう確認しておくが、まだ特典素材を余らせている……なんてことはないよな?」
「私は無いな」
「……【円卓騎士】は?」
「昔のように、『生者』に会いたいと告げる者が居るな」
今は強制送還も一瞬で済むので、お世話になる時間もさして無い。
彼らは強者であるため、国民に被害を及ぼす固有種の討伐に駆り出されるのだろう。
ネームド種にせよユニーク種にせよ、一般人では倒せないぐらいに強い。
だからこそ、より強い者が倒し……弱者に力が手に入りづらくなる。
特典素材を使ったアイテムならば、限定的に誰かへ貸すことができる場合もあるがな。
まあ、他者が強化されることを選ぶなんてこと、弱肉強食なこの世界じゃほぼ無いが。
「…………まあ、『騎士王』にはいつもお世話になっているからな。別の機会があれば、一人ぐらいやるか」
「本当か!?」
「うおっ、そんなにか? というか、素材で落ちる方が珍しいだろうに」
「ふっ、何を言うか。貴公がやると言えば、願望が生まれる。そうなれば、ほぼ確実に素材として落ちるだろう」
腕のある職人に伝手がある、あるいは当人が職人ならばそうなる可能性は高まる。
逆に言えば、そういった人物が居ない環境下であれば普通に討伐者に適した形へ。
装備できる数に限度はあるだろうが、それは適時切り替えればいいだけの話。
……普通、戦闘中に何度も武器を切り替えるだけでスキルが手に入るからな。
「むっ、どうかしたか?」
「……いや、自分の弱さを嘆きたくなっただけだ。それより、生産世界からの要望について確認したいんだが、ちょっといいか?」
「ああ、構わんが……それよりも──」
「うむ。少しマナー違反だが、屋台はそういう物だしな。食べながらにしようか」
出来上がった串焼きを店主が持ってきたので、『騎士王』と共に食す。
漬けるところからやっていたので、完成までが結構長かったんだよな。
「! 今回の物もなかなかイケるな!」
「いつものタレを、ブレンドして熟成させているからな。スキルもいっさい使わず、手間暇かけてやってるんだ、そう評価されないと困っていたよ」
「むぐむぐ……そうか。生産世界には、こちらからも圧を掛けておく。幸い、『生者』の腕は本物だからな。どれだけ過剰な要求をしようが、奴らにはその価値に準ずる対価が要求できないだろう」
「そこまでかよ……」
自信ありげな『騎士王』に、外交辺りも任せられそうだ。
……さて、原人関係の話は、これぐらいでいいかな。
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