虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
第二回家族イベント準備 その04
ミッション:特典素材を用いたアイテムを生成せよ!
生産ギルドを訪れた俺に、そんな無理難題が押し付けられた。
たしかに俺は、交流試合のイベント中にそれを成している。
それは俺の腕を証明する他に、奴のお墨付きの職人だと世界に知らしめていた。
──『騎士王』。
冒険世界中、最高の存在。
本来であれば、俺が本日会おうとしていた人物だ……なお、延期については連絡済み。
最初は怒っていたが、その理由が自分が一番最初にやった無理難題のせいだとはっきり伝えればそれも収まった。
……俺にそれだけの実力があることを、事前に知っていたからな。
そのうえで、あの場でそれを行うことにはヤツなりの思惑があったのだろう。
「まあ、お互い同意の上ですしね」
「?」
「ああいえ、こちらの話です。それよりも、無理難題の話ですが……そもそも、いったいどちらの方がそんなご依頼を?」
「うーん、君はもう特級会員だから隠し事はしないけどね。実は、生産世界からなんだ」
生産世界、それは錬産術の雛形とも呼べる技術を編み出した、生産に特化した世界。
なればこそ、俺が抱いた疑問にもギルド長はすぐに気づいた。
「うん、どうしてわざわざ自分に、そう訊きたいんだろう? もちろん、ぼくの方でもそれはおかしいと思ったからね、ちゃんと尋ねておいたよ」
「それで、返答は?」
「要約すると、『大変興味深い技術をお持ちなので、私たちの世界でその腕を振るってみてもらいたい』だって。君さえよければ、高待遇での移住も考えるってさ」
「まあ、お断りですね。そのうえで、こちらから出す条件を呑んでいただければ……仕方ありません、受けるとしましょう」
断ってもいいだろうが、引き受けて生産世界とギルド長双方に恩を売る方が好ましい。
だが、向こうの要望通りにやる必要はまったく無いわけで……条件を設ける。
「ふむふむ、条件って? ちなみに向こうとしては、最高の設備と環境、それに補助を用意するってことだけど」
「まず、それらは要りません。場所はここ、そしてその間私が使う場所へのいっさいの侵入を禁じます」
「うわー、そりゃあ酷い。職人は見て覚える派だって、居ないわけじゃないんだよ?」
「分かってて言っていますよね? それに、ご理解いただいていると思いますが、私の技術は特にアレですので……最悪、一生を住み心地の良い牢獄の中で終えることになりかねませんよ」
そんなわけで、生産世界側に条件を呑ませるまでは再び時間が空いた。
……さて、次の交渉はまずお詫びから始めないといけないな。
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