虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

執事雇用 中篇



 子供たちにサプライズで、現実世界に来てもらった『SEBAS』。
 テレビの画面の中、今は執事服を来た子供のアバターを動かしている。

 ……生まれてから向こうの加速を含めたとしても、まだまだ子供だからな。
 何より、俺も瑠璃も『SEBAS』を自分の子供のように考えてもいるし。

 運営との取引は、そこまで難しい問題じゃなかった。
 向こうのお願いを多少聞いて、これまでの恩を高く売っただけ。

 本来なら通らないようなやり方だが、その日の俺には幸運の女神様が居た。
 結果はお察しの通り、瑠璃にとって好ましい形で交渉は成功に終わる。

 ついでにサービスとして、運営で用意されていたアバター関係の情報も貰った。
 そして、このアバターは『SEBAS』の新たな姿にもなっている。

「さすがにプレイヤーと同等の権限を直接は与えられなかったが、それでも向こうとしても貴重なサンプルとしてデータが欲しいみたいでな。まあ、人権? AI権を尊重した範囲で、調査をするついでらしい」

『へー』

「なんと薄い反応……まあ、うちだとありふれたことだけども」

 息子の刺激的な日々を知る家族的に、そこまで驚くようなことじゃないわけだ。
 この繋がりはいろいろと使える……そう、『SEBAS』も了承したんだよな。

「──さて、家族で行う冒険についての説明だな。それじゃあ『SEBAS』、頼む」

《畏まりました──まずはこちらを》

 テレビの画面が切り替わり、映し出されるのはアイスプルの定点カメラ。
 録画された映像には、ある光景がくっきりはっきりと残っており……。

「まず、アイスプル最強決定戦をやる。参加は自由だし、観ているだけでもいいが……翔はやる気満々だな」

「うん! というか父さん、アレって……」

「全員超越種か災凶種だな。言っておくが、さすがに特典をみんなにプレゼント……という企画じゃないぞ。いろいろやって、アイスプルは迷宮内部以外で倒しても特典は出ないようにしてあるからな。それでもやるか?」

「強い相手と戦えるなら、それでいい!」

 脳筋みたいな発言を……。
 まあでも、特典目当てみたいなことを言われてても困ったし、この方がいいか。

「とまあ、バトル関係はこういう感じだ。いちおう聞くが、舞と瑠璃はどうする?」

「うーん、従魔は有りなの?」

「『SEBAS』、どうしようか」

《事前に戦力を測定させていただきまして、それぞれに定めたコストを各試合に設けた合計数以下にしていただきましょう》

 舞はそれを了承、瑠璃もたまにはやってみたいと参戦を宣言。
 ……ノリで言ったのだが、なんだかとんでもないことになってきたな。


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