虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
アンヤク(07)
???
そこはアイスプルでも、冒険世界で、ましてや■■が結ばれた星々でもない。
存在しない星……否、その存在を認識されていない場所での出来事。
『──願望機:Typeタイガー。その固有機構は……』
一冊の書物に目を通し、そこに記された情報を読み解いていく。
機械仕掛けの虎の絵が描かれたその書物には、『■』の求める知識が載っている。
『アイツが居れば、わざわざ調べずとも分かるのにな。ハァ、仲間外れは辛いよな』
本を閉じ、元在った場所へ仕舞う。
そこには同じ形式で綴じられた、十一冊の本が存在している。
『子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥……かつての同朋たちも、今や離れ離れ。都合のいいように利用され、痕跡も残さず消されている』
独唱するように語る『■』、その■から流れるのは液体。
たしかに、『■』にとってそれそのものは許しがたい行いだった。
『失われし同胞よ、何処へ。願いを叶える君たちに、この言葉は無意味だろうが……願わくば、無事であることを祈ろう』
──そして、再びこの地で集おう。
その独白は、これまでのものと違い、すぐに空気へと溶けていくのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
■■世界より、代行者へ報告──送信。
《受信しました。そうですか、ご協力ありがとうございました》
否定──すべては■■世界アイスプルの発展のため。
《お任せください。旦那様、そして私もこの環境に安寧を求めている以上、害するような行いはしません》
信用──【救星者】及び代行者の行い、その経歴よりある程度の行いは認めています。
《此度の件ですが、もしや干渉を?》
否定──ただし、異常な力場による外部からの干渉は確認されています。
《……さすがは奥様です。無意識であろうとも、旦那様の益となる結果を引き出すとは》
仮定──ある種のイレギュラーなのでしょう、その帳尻合わせに【救星者】は選ばれたと推測されます。
《私はそうは思いません。旦那様は一度、私に仰っておりますので》
疑問──それはどのような?
《『俺はルリに、ただ教えたかっただけだ。初めはそれだけ……だが、いつの間にか好きになっていた。俺も、そしてルリも。だから奪った。何が何でも、俺だけの力で──俺が信じる神は、ルリを愛する神だけだよ』と》
…………。
《思うところはあるでしょう。アイスプル、いいえ……かつてのこの地にもまた、そうした行いを選んだ者が居たはずですので。ですが、旦那様はそれを成し遂げた──どうかそれを、お忘れなきよう》
◆ □ ◆ □ ◆
これは、二つの星で起きていた二つの出来事……そのどちらもが、この先のツクルの行いに大きく関わっていくことを、本人だけが未だに知らないのだった。
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