虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

探索イベント後日談 その09



 虎型の願望機を初期起動、そして停止することに成功した。
 ……やり方はいつもの如く、無限残機を利用してのアレではあったが。

 ともあれ、確保したその機体を今度はプログラムの改竄も含めて改造していく。
 前提として他の願望機を検知しても、破壊しないようにするのは必須である。

「──というわけで、そういった諸々の改良が終わりました!」

『────!!』

「えー、今回皆さんにお集まりしていただきましたのは、そのお披露目のためです……ほとんどの皆さんは、そちらではなくご用意した御馳走がメインだとは思いますが」

『────!!』

 アイスプルに住まう住民、その大半はもともと森に生息していた魔物だからな。
 成長して高い知性を得たものの、本能に忠実である部分が多い。

 進化先的に暴走する可能性がある個体も居るが、そこは風兎が対応。
 何でも、彼らに対してのみ絶対的な差を示す能力があるんだとか。

 まあ、そんなこんなで、彼らも純粋に料理のためにこの場に集まっていた。
 虎型の願望機を見に来た者は……この場に居る一割程度だろうな。

「さぁ、ご登場していただきましょう──メカトラ!」

『ガウッ!』

 神・世界樹に取り付けたスポットライトがパッと灯り、ある場所に光を浴びせる。
 光が当たるそこには、一匹の虎が咆えている……ただし、その大きさが特殊だ。

 その虎の大きさは、約1mほど。
 虎の赤子よりもなお小さいその体躯で、大人のように高々に咆える姿に……一部の住民が盛り上がっている。

 特にアイスプルの守護獣であるエンキは、とても楽しそうだ。
 うん、新しい友達を見つけた、みたいな反応である。

「と、いうわけでメカトラだ。メカドラ同様に、基本的にはこの世界に滞在する予定だ。エンキ、これからいっしょに居られるぞ」

「クキュッ!」

 とても嬉しそうなエンキの姿に、他の住民たちもほっこり。
 一番若い個体、かつ世界の守護獣だからこそ、丁重に扱われているのだ。

「クキュ?」

『ガウッ!』

「クッキュウ!」

『ガウゥウ!』

 今さらだが説明すると、メカトラもメカドラ同様にアナウンス機能は消去した。
 あれ、付けておくと識別が変わるのだ……説明はまた別の機会。

 しかしそれを消しておけば、いちおうだが従魔として扱うことができるようになる。
 あとはアイスプルの管理者として、受け入れをちょいちょいっと行えば……完了だ。

 晴れてメカトラはこの世界の住民として、正式に星から認められる。

「しかし、願望機ねぇ……実はまだ、稼働している機体が在ったりして」

《絶対に不可能、ということはありません。神すらも欺く欺瞞が働いていれば、あるいは可能かと》

「……さてさて、どうなることやら」

 それが可能な存在も、各世界に居るかもしれないわけだ。
 ……やっぱりメカトラの探知機能、別の形で再現した方がいいかな?


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