虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

探索イベント後日談 その07



 かつてはメカドラも大型サイズの怪物として、俺に容赦なく牙を剥いてきた。
 その頃はアナウンス機能も搭載されていたので、警告などもされていたが……。

≪目標:Typeドラゴンを確認──デストロイを起動します≫

 虎型の願望機もまた、当時のメカドラ同様にバーサークな状態に入ってしまった。
 どうやら『龍虎相まみえる』という故事に習い、敵対関係にでもなっていたのだろう。

「じゃあ、そもそもダメだったわけだな」

『ギャウ……』

「メカドラ、お前が悪いわけじゃない。それに、やりようはいくらでもある……なっ、そうだろう?」

《予想されていたプログラムですので。一度戦闘不能まで持ち込んだ状態で、新たなプログラムで書き換えましょう。現在、早急に作成中です》

 起動自体は問題なく、あくまで正規のシステムが問題を起こしただけだ。
 初期起動は済んでいるので、後から書き換えても精査プログラムには引っかからない。

 なので抵抗できないようにしてから、メカドラを敵視しないよう書き換える。
 そうすればそれ以外のシステムは正常なので、運用に支障は出なくなるはずだ。

≪敵対の意思を確認。対象を追加します≫

「行くぞ、メカドラ──『機鎧』だ!」

『グギャウ!』

 メカドラは『プログレス』の雛形。
 俺の意思に沿って、ありとあらゆる能力を獲得することができる願望機。

 俺でも扱える武具、それをメカドラになってもらうよう頼んでいた。
 ……願ったのではない、メカドラの意思を尊重したうえで頼んだのだぞ。

 ともあれ、願いを叶えるためのリソースとも呼べる物を、回収前に使われていた洗脳と兵器生産から、俺個人の武装に切り替えた結果が──『機○[龍星]』シリーズである。

 俺の言葉に応え、メカドラは小型化していた自らの体を再び大きくしていく。
 そして、さらに変形を行うと、今度は俺を包み込む鎧を模っていった。

「飛ぶぞ──“機龍装翼”!」

『ギャウッ!』

 鎧がガシャガシャ音を立てると、背中の部分から翼が展開される。
 龍の翼……などではなく、それはジェット機の持つ角ばった翼だ。

 有り余る魔力を供給すると、エンジンに火が燈り俺の体を宙に浮かす。
 そして、その供給量を上げれば──さらに力を増して超高速での移動を可能にする。

 普通なら風圧で死ぬところだが、俺には鞘仕込みの強力な結界があった。
 前方部分をそれで覆うことで、肉体を支えることに成功している。

≪対象の武装化、および願望機としての利用形態を確認──猛虎モードを起動します≫

 龍であるメカドラには、逆鱗モードという暴走状態があった。
 おそらく猛虎モードは、それに通ずる形態なのだろう。

 全力で破壊する、そんな意思が虎型から伝わってくる。
 ──なればこそ、それを超えて俺たちが勝つのだ。


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