虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
探索イベント後日談 その05
願望機、それは俺が勝手に呼称している、特別なシリーズの機械に名付けたもの。
その機械たちは総じて、本来機械にあるまじき性能を秘めている。
──すなわち、願望の成就。
繁栄を願えば発展を促し、滅びを願えば破滅を授ける。
そこに善悪の識別は無く、ただ望まれたことを叶えるだけ──それが願望機(仮)。
俺はかねてより、十二機存在したうちの一機である龍型を保有していた。
機体の数がそれだけしか無いことも、その機体を調べている内に分かったことだ。
「しかし、虎型がまさかガチャの大当たりとして出てくるとはな……運営は何を考えているんだろうな」
創造神様より賜りしチート、:DIY:を使いながらそんな機体の一機を修復中。
大きさが30m以上はあると思わしきその巨大な機械を、矮小な人の身でだ。
ただ、サポートが無いわけではない。
ドローンやアンドロイドなどが修復に必要な物を持ってきているし、各パーツを適切な場所に運んでいたりもしている。
一番最後、すなわち手を加える部分は生産能力を持つ俺が必須だが、その瞬間以外ならば、誰がやっても問題ないからな。
作業中に限り、:DIY:によって普段とは比べ物にならないほどの超ハイスペックな肉体になってはいるが……だからと言って、すべてを手作業でやりたいわけじゃない。
「『SEBAS』、状況は?」
《組み立てるだけで良い部分は、現在輸送中です……しかし、いくつか回路が破損している部分が確認されております》
「あちゃー。せめて、どういった理由で破棄されたのかが分かれば、もう少しやりようがあるんだけどな。設計図、それとメカドラ修繕時の情報だけが頼りだ。というか、どうせなら予め改造しておきたい」
《その場合、再起動時のチェックに引っかかるでしょう。初期起動までは、我慢を》
奪われて、改造されることを是とはしていないんだよな。
メカドラはあの手この手でどうにかしたものの、それは俺が活動中に見つけたからだ。
完全に一から直し、再起動をしなければならない虎型には通用しない。
願望機には共通して、ハッキングなどに対する防衛システムが備わっているからな。
「……ふぅ、メカドラと共通の部分はこれで良し。あとは、この虎型……そうだな、メカトラで。そのメカトラ固有のシステム周りをどうにかしないと。魔物の素材は?」
《素材保存用の機体をそちらへ》
「コイツか……よっと。うん、機械系の魔物もちゃんと入ってる」
アイテムボックスの要領で、球体型の宙を漂う機体が大量の素材を運んでくる。
俺はその中から必要になりそうな物を引っ張り出し、再び修繕作業に入るのだった。
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