虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

探索イベント後日談 その04



 すべてを一瞬の運勢に注ぎ、宝箱を開く。
 そして、中から光が溢れ出す──その色は黒色!

「よし、来たぁああ……あ、あっ?」

《これは……》

 今さらだが、『賽祈箱』の仕様を説明しておこう。
 中身がランダムで決まるこの箱は、別に出てくる中身で大きさが変わるわけじゃない。

 開けると箱は消失するし、開ける場所を間違えれば中身が即座に破損することもある。
 つまり何が言いたいかと言うと……開けた後の命の保証もまた、されていないのだ。

「えっ、ちょ、待っ──!」

 箱から溢れ出す大量の──ゴミ。
 正確に表現するならば、スクラップが一番妥当だろうか。

 バラバラに分解された機械部品や、ある程度それが何であったのかが分かるパーツなどが箱から飛び出してきたのだ。

 その流れに俺は呑み込まれ──圧死。
 能力値を運に注いでいても、生存確率0%だったものを1以上にすることはできなかったようだな。

「痛たたたた……これは、虎か?」

《どうやら、そのようでございますね》

 幸い、頭部の部分が残っていたので、そこからこの機械が何だったのかを判断する。
 内側はかなり破損しているが、それでも見た目はほぼ間違いなく虎だった。

 しかし、虎を模した機械がどうして……しかも、それがなぜX級の当たりなんだろう?
 鑑定スキルを掛けてみるが、本当に価値があるようで詳細情報はいっさい出なかった。

「『壊れた機械』、まんまだな。けどまあ、これなら分かるよな──:DIY:、簡易起動だ」

 稀に使っているが、生産を行わずに知識だけを取り入れられる簡易起動。
 目に入った品の生産過程を知るのに便利なのだが……果たして、何か分かるか?

「ッ!? こ、れは……」

《旦那様、何かお分かりになりましたか?》

「あ、ああ……これは、マジで大当たりだ」

 それはかつて存在し、危険視され、破壊された機械。
 現存する物はほとんどなく、あっても封印されているような代物だ。

 そう、その機械は使い方を誤ればあまりにも危険すぎた──願望を叶え、実現するその力は。

「これ、願望機だ」

《! それは……》

「ああ、十二ある一機。虎型の願望機だ」

 なぜそれが、『賽祈箱』の中から出てきたのかはさっぱり分からないが。
 しかし、事実としてそれが目の前にある以上、やるべきことは一つだ。

「直すぞ、『SEBAS』。設計図はインストールしてもらった。それを基に修繕をするだけでいい。ああでも、まだポーションの効果が残るからな、終わるまでは待とう」

《では、その間に必要なモノを取り揃えておきましょう》

「頼む。じゃあ、今から言う物を頼む」

 天然由来の素材なら、:DIY:の力でいくらでも用意できるのだが……魔物由来の素材はダメだからな。

 時間はあるので、その間に『SEBAS』に用意してもらおう。
 修復に成功すれば、もしかしたらまだ使えるかもしれないしな。


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