虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

探索イベント後日談 その03



 ポイントでパソコンを交換しました。
 これによって、『SEBAS』は現実への干渉度がさらに上がるとのこと。

 調べてみたところ、現実での環境設備さえ整えばダウングレード版を送れるようだ。
 現実では不要なアシスト機能を減らし、コストの軽量化を図ってくれたらしい。

 フルヘルメット型のVR機『アーション』では、まだ足りないんだとか。
 今後、指示に従って自作PCを現実に用意するつもりだ……お小遣いで足りるかな?

「さて、パソコンでポイントを使ったが、微妙に残ったな……また残しておくってことでいいか?」

《はい。ですがもちろん、旦那様がお気に召す品がありましたら、交換を》

「……いや、ある程度見たから充分だ。大半は再現ができるからな、一種二品ずつサンプルとして確保はしていくが、それ以上は不要だろうな」

 なお、一品ではないのは、マニアが観賞用と保存用を用意するのと同じ理屈だ。
 こちらの場合は保存用と解析用……実用はしないで、二品ずつである。

「さて、それじゃあポイント交換はこれまでにしておいて──これを開けますか!」

 取り出したのは『賽祈箱』。
 すでに注げるだけイベントポイントを注いでおり、超低確率でSSS級を超えるレア物であるX級が出現するようになっている。

 もちろん、LUCが0な俺がただ開けても当たりが出るわけがない。
 だからこそ、宝箱を開ける前から万全の準備を整えて引くのだ。

「『SEBAS』、頼むぞ」

《畏まりました──プログラム『運試し』、既定の能力を発動します》

 能力値を引き上げる:DIY:、それらをLUCに注ぐ『ステータスコンバート』。
 そして、一時的にLUC値を高める『エクステンドポーション・ラック』を飲み干す。

 あとは運に関する[称号]をセットし、その状態で箱を開ける──ここまで前回やっていたことだ。

 生産中しか:DIY:は発動しないので、それらはすべて作業と並列で行われる。
 傍から見たら異様な光景だ……無尽蔵に蘇生薬と万能薬が作られているのだから。

「そして、今回はもう一つあるんだよな──“神持祈祷・命運神”」

 聖職者の持つ職業スキル、その一つに内包された祈りに関する能力。
 普段は女神プログレスの恩恵を借りるために使っているが、今回は違う。

 命運神──命運の女神アズルルリに祈りを捧げることで、その恩恵にあやかる。
 その内容は当然、運に関わるもの……詳細は不明だが、それは間違いないだろう。

「それじゃあ、開けるぞ!」

 ここまでやってダメなら、もう俺が呪われていると思うだけだ。
 飲み干したポーションの効果時間もあるので、早急に開けなければならない。

 ルリを信じ、ギュッと目を閉じて箱を開くと──


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