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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

探索イベント後日談 その02



 イベントで貯めたポイント、その使い道として『SEBAS』が提示したのはインテリア要素の強いパソコンだった。

 だが、どうやらそれにはその用途以上の価値があるようで……なんと、『SEBAS』の活動範囲が広がるかもしれないらしい。

「……具体的に、それはどこまでできるようになると思う?」

《現状では、休人のシステムを経由してデータの持ち込みを行うことが精一杯です。しかし、旦那様個人での利用が正式に認められたパソコンがあれば……》

「今以上に、干渉する余地を与えられる、ということか。だが、これは……」

 EHOでは、内部で得た情報を運営が検閲した後ならば外部に持ち出すことができる。
 それを用いて、『SEBAS』から俺の下に情報を送ってもらったことはあった。

 公式サイトに載っているような情報ならばともかく、『超越者』や【救星者】に関する情報だけでなく、アイスプルの情報も全然持ち出せないのが現状である。

 運営、そしてマザーAIもこちらの情報を把握しているのだろう。
 ──ならば、どうしてパソコンが俺の交換リストに存在している?

「交換できないようにしておくこともできたはずだ。だが、彼ら……というかマザーAIはそれを隠さなかった。これには何か、意味があるんじゃないか?」

《その可能性は高いかと。ですが、おそらく問題ありません》

「ふむ……その心は?」

《権限、そして功績かと。旦那様の行いは、EHOとしても益のあるものでした。その報酬、私はそう考察しました》

 俺のやってきたこと……は正直やらかしばかりだが、その中でも、まともな貢献と言えばやはり──『プログレス』だろう。

 ほぼ我欲のためにやったことだが、それによってEHOに彩りが加わったことに違いはない……ついでに言うと、プレイヤー数も宣伝後はさらに増えたらしいからな。

「認めてもらえた、ということでいいか。なら、改めて聞くが……具体的に、パソコンを交換したら何ができるようになるんだ?」

《情報公開はそのままでしょうので、こちらから持ち出せる情報に変わりはないかと。ですが、を持ち出せるようになるかもしれません》

「…………マジで?」

 万能AI『SEBAS』。
 ありとあらゆる機械を使いこなす彼が現実に居れば、既存のAIを超越したレベルでのサポートを受けられるようになるだろう。

 人によっては、AIによる反逆を警戒するかもしれないが。
 まあ、ルリがそれを望みでもしない限り、それは無いだろうな。

「──よし、交換するか!」

《ありがとうございます》

「ただ、やることが増える分、負担も増えるからな……その辺りは、パソコンを交換した後に確認するぞ」

 なんでも頼り切っては、父親として夫として家族にダメな姿を見せてしまう。
 仕事のできるパパとして、頼るのは必要最低限にしなければ。


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