虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

探索イベント後日談 その01



 アイスプル

 探索イベントが終わった今、俺がやるべきことはただ一つ──景品交換だ。
 基本、一部のイベントを除いてポイントは引き継ぎ式になっている。

 なので溜めれば溜めるほど、運営にとって価値のある品々を手に入れられるわけだ。
 その中には、【試験職】なども含まれているようだ…………かなり高いけど。

「とりあえず、前回と同じく最大値で引ける分の賽祈箱を一つだな。そのうえで、何か面白い物が無いか探そう」

 賽祈箱。
 それはイベントで得たポイントを注ぐことで、得られるアイテムが変わるガチャのような物……前回は、大変お世話になりました。

 何かいいものは無いかと、交換用のUIを操作しながら調べている。
 ちなみに、交換は本来特定の場所でないと受け付けていない。

 だが総じて、そういった場所には怪しい者が入れないようになっている。
 ……まあ、俺の場合は【救星者】の権限でアイスプルなら自由に交換可能だけども。

 そうして権限を誇示して、何かいいものは無いのか捜索中。
 事前に『SEBAS』がリスト化してくれたUIを観ていると……気になる物が。

「……えっと、この『奇跡の秘箱』っていうのはなんだ?」

《『賽祈箱』のポイント固定版です。SSSである虹演出から、Cである赤から紫の七色までが一定確率で出現します》

「X、つまり黒色は絶対に出てこないのか。まあ、余りを使うには向いているかもな。俺はやらないけど」

 前回も、黒色は大当たりだったのでそちらの出現を期待している。
 あのときより、俺ができることも増えている……確率操作ぐらいやってやらぁ!

「とまあ、それはいいとして。何か、オススメのアイテムは無いか? 前回はそれであの箱を教えてくれたから、今回も期待してる」

《畏まりました──でしたら、こちらはいかがでしょうか?》

「これは……パソコンか?」

 元より、UIを経由して[掲示板]やら調べ事ができている俺たちにとって、有用性の欠片も感じられないアイテム。

 どうやら企業とのコラボ品で、インテリアとしての用途を重視した品のようだ。
 ただし、性能はしっかりと再現され、ついでにネットへのアクセスも当然可能。

 まあ、現実でもパソコンを使っている人なら、割と欲しくなるかもしれない。
 ……いや、こっちにまで仕事を持ち込みたくないからと拒否するか?

「ただ、俺パソコンもう持っているし。これが必要なのか?」

 このEHOを始めたばかりの時、よくハイテンションになってオーバーテクノロジーの産物をいくつも創り上げている。

 その中にはパソコンも含まれており、いつも俺を支えてくれている『SEBAS』も、元はそのパソコンで創られたプログラムだったのだ……今じゃスパコンが住処だけど。

 なので、俺としては不要だと思うのだが、何やら考えがあるらしい。
 必要ポイントは飾りだからか、そこまで高くないのでいいんだけども。

《このパソコンは運営が関わっている品物なため、マザーAIも存在を認めています》

「マザーAI……するとどうなるんだ?」

《──私の活動範囲を広げることができるかもしれません》

「!!」

 それは、俺にとって重要な案件だった。
 ……可能なのか、大変興味深い内容だ。


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