虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

探索イベント その20



 チュートリアルに長期滞在したら、また新たなエリアを解放できる権利が貰えました。
 今回は『初級の鍵:開示の間』、名前からなんとなく部屋の性質は理解できるだろう。

 すでにエクリを経由して、部屋の方は開放してある。
 休人の中でも恐れを知らない特攻野郎たちが、内部の調査を行ってくれていた。

《──[掲示板]によると、どうやら一度入場した部屋の、ヒントを全開示した状態を観ることができるエリアのようです。クリアなどは無く、あくまでそのためだけに存在しているとのこと》

「あー、それこそ分からない人たちへの救済エリアみたいな物か。一度で全部開示されるか分からんし、それならこっちで確認してから入ればいい……そういうことだな」

《ただし、ポイントが入らないだけでクリア判定にはなるようです。『不思議な○○』もクリアしたことになり、ストーリーを進めることができます》

「なるほどな……」

 要するに、今回俺がチュートリアルの部屋で体験をしたことを、他の誰でもやってみることができるわけだ。

 ただし、通常の部屋と違って、そこでクリアをしてもなんらポイントは得られない。
 がしかし、ストーリーのみを楽しみたい者ならば、面倒な謎解きを省いて進められる。

 割と考えられている……だが、それを長期滞在をトリガーにして用意しておくか?
 本当、もしかしたら今回解放される予定は無かったのかもしれない。

 なお、書いてある通り『初級』に限定されたエリアなので、中級以降のストーリーはまた条件を達成しないと省けないわけだ。

 たぶん、一定数のエリアを真面目に攻略するとか、そういう面倒なのがあるんだろう。

「景品交換はクリア後だし、今は気にしないでおくとして……現状、どこまでクリアされているんだ?」

《現在は上級まで。ただし、次の階級は未開放のようです》

「条件が足りていないってことか……なんだか複数条件で開くエリアも増えてきたって話だし、今回だけじゃ難しいな」

 なんてことを考えていると、休人たちの歓声が上がる。
 なんだなんだと思い、ドローンを飛ばしてみれば答えも分かった。

「ふーん、やっぱり引き延ばしたか」

《今回は試供版、ということでしょう》

「次回にこうご期待ってか。まあ、ゲームでも定番の流れだな。休人たちも、上級で知り得たストーリーの先が楽しみでわくわくってことになるだろうし」

 どうやらそんなお知らせが、施設の一つに掲載されたようだ。
 まあ、俺もいろいろと楽しめたし、また次回に期待しておこうか。

 ──なお、俺の獲得ポイントは、上級をクリアしている連中と同じくらいらしいです。


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