虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

探索イベント その19



 エクリが俺に代わり、裏で情報収集に勤しむ連中を容赦なく排除していった。
 ……ただ、関係の無いヤツが居なかったわけじゃないだろうが、そこはまあ……うん。

 実際、エクリには注意勧告はしてもらっているので、そのうえでの処理なんだがな。
 嫌なら逃げればいい、残っているのはそう命じられた連中か──望んで来たヤツだ。

 タクマのような情報屋、彼らの中には自ら情報を集める者も居る。
 そして、休人プレイヤーという死んでも死なない厄介さを利用する奴らもな。

「──なんだかんだ、もう一週間か」

 予め想定していたのか、[ログアウト]も可能なチュートリアルの部屋。
 だからこそ俺はこうして、何もしないまま滞在することができていた。

「さて、そろそろかな。これだけ長いと──いろいろ出てくるみたいだな」

 大人から子供まで参加しているこのイベント、こういった謎解きにも得意不得意があるだろう……上級ともなれば、相当な難易度になっている。

 もちろん、自分の身の丈にあったエリアに挑めばいい。
 しかし、ストーリーが気になり先を目指す者も居るのだろう。

 ──そんな休人のため、運営は考えた……バカも天才も楽しめる謎解きを。

「で、その結果がこれだよ……分かりやすくなったな」

 俺の視界には、矢印が浮かんでいた。
 その行き先は引き出しの一部があり、そこには無数の鍵が入っている。

 そして、その中にはこの部屋からの脱出を可能とする鍵も含まれているのだが……総当たりで探さなければならない代物が、今の俺には一目で分かった。

「時間経過によるヒントの提示。経った時間と来た回数によって、ヒントがどんどん増えていくシステム。まあ、チュートリアルの部屋は、そっちもお試し版みたいに少ないからこの程度で済んでるけどさ」

 鍵を取れば、今度は出口を指し示す。
 ……ここまでやるってことは、もしかしたら中級や上級は簡単には出られない、ということなのかもしれないな。

 なんて不吉な予感を覚えながら、鍵を慣れた所作で差し込み捻る。
 もちろん、この鍵がハズレなわけもなく、ドアノブを捻れば扉は開く。

「…………ん? えっ、まだあったの?」

 正直、今回はただの休養気分で新たな鍵は期待していなかった。
 ……というか、滞在期間が条件の新エリアはロクな物じゃないだろと思っている。

 しかし、そんな想像とは裏腹に実際問題、新たな鍵が用意されていた。

「これ、期間中に全部をクリアするなんてできるんだろうか?」

 いやまあ、そうしろなんて最初から一言も言われてないけども。
 それならそれで、俺はもしかしたら……やり過ぎたのかもしれないな。


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