虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
探索イベント その16
精霊に変化し、その姿を隠した俺。
唯一そんな俺に気づいたある休人も、エクリの能力を使ってサクッと排除済み。
元より、派遣された連中や俺を金になるからと目に着けてきた者たちは、対人に性能を傾けているのだろう……霊体化は、そんな彼らにとって最悪の相性だったのだ。
「さて、と──“孤絶ノ衣”」
スキルにあった全魔法、全魔術スキルにより『騎士王』の作った術式もエクリであれば容易く……は無いが発動できる。
効果は存在の遮断。
今は気づかれていないが、次第に慣れる者が居るかもしれない……それに備えてのこの術式だ。
「お次は──“万物変換(闇)”」
そうして姿をさらに隠し、発動した能力。
エクリ(俺)を中心として、真っ暗な闇が広がっていく。
その能力に先ほど使った“万闇統一”。
闇はどこまでも拡張し、やがて至る所に延びていった闇がすべてを呑み込む。
「見つけた──“闇点発露”」
周囲に集まっていた休人、そのすべてに対して発動させた能力。
それはエクリ……いや、[エクリエンド]が持っていた能力の一つ──強制弱点付与。
与える弱点は闇、たとえ耐性を極めて無効化や同化に至っていても……エクリの性能を超えない限り、致命的なダメージを闇属性の干渉で受けてしまう。
エリア中に広がった闇は、『SEBAS』の操作によって無限回数の攻撃を行う。
いかに防御が固くとも、いかに回避が上手くとも……絶対は存在しない。
雫が石を穿つように、幾度も続く攻撃がやがてたった一度の当たりを引き出す。
それで充分……どれだけ生命力が多かろうと、当たった瞬間に死に戻りしていった。
「うん、これで一度目……同じやり方はアレだからな」
《お疲れ様です》
『素晴らしいです、創者様』
「ありがとう、二人とも。そうだな……またしばらくチュートリアルに引き籠もるか。エクリ、体を返そう。ただ、一つ任されてもらいたいんだがいいか?」
『畏まりました』
まだ何も言っていないんだが……まあ、否定されるとはまったく思ってないけども。
エクリが動いたこと、また俺が何もしていないことをどう意識するのかを確かめる。
ジンリであれば、必ず何らかのアクションでこちらの更なる反応を見るはずだしな。
そこでエクリがさらに撹乱し、俺の情報を誤魔化す……という予定だ。
「──というわけだ。それじゃあ、接続を解除するからな。エクリも、あとでその分報いるから頑張ってくれよ」
『! もったいないお言葉です。必ずや、その任を果たしてみせます』
その言葉を聞き終え、俺はエクリとのリンクを解除する。
そして、再び移動を開始……チュートリアルの部屋へと戻るのだった。
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