虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

探索イベント その14



 タイムアタックも高速で済まし、一度俺は本格的に隠れることにした。
 だがその間、何もしないとは言っていないので……エクリの方へ行ってみる。

「──っと。久しぶりにやったけど、本当に違和感が無いな。悪いなエクリ、急に変わってもらって」

『問題ありません。創者様の命こそが、最優先ですので』

 現在、俺の意識は自身のアバターからエクリの中へ移動していた。
 分かりやすいたとえだと、アバターを切り替えるような感覚だろうか。

 彼女のスペックをそのまま……ということもできなくもないが、やはり俺は『生者』とのコンボに慣れているので、ステータスも同期させている。

 そうしないと、権能が使えなくて死に戻り後にすぐ復活できないし。
 ……いや、彼女のスペックは疑っていないが、俺自身の操作に期待ができないからな。

 俺よりハイスペックだし、特殊能力なんて数十は搭載している。
 うん、使いこなせないんだよな……サポートありきならまた別だけども。

「そういえば、擬似スキル以外にもちゃんとしたスキルは生産過程で組み込んでいるはずだが……どんな物があったっけ?」

《全魔法、魔術、万能耐性、超速再生、超越克服、回路切替、無限進化ですね》

「…………そ、そんなにもチートが」

《前半は字の如くです。超越克服は属性同士の相性を無視できる能力、回路切替と無限進化は組み合わせることで、追加で組み込んだプログラムを随時更新可能としたことをスキルとして表示しているようです》

 たしかに、俺は後から何かを追加するかもと思い予め回路に余地を残していたな。
 だからこそエクリには、まだ成長の可能性が残っている……それを表しているのか。

《ただし、本来の予定とスキルとでは解釈に違いがあります。どうやら、経験値を捧げることで回路そのものを丸ごと変化させることも可能のようです》

「……それは切替じゃないな、もう交換とかそういう類いだろ。いやまあ、回路自体も交換したいとか、そういうことになるかもしれないからいいけど」

 なお、回路切替は割と普通だ。
 組み替えることで、エクリを一つの分野に特化した状態にすることができるよう、いくつか切り替えた状態をプログラムしてある。

 おそらくそれが、回路切替の本来の仕様なのだろう。
 まあ、何が言いたいというと……万能型で優秀というわけです。

「さて、こうして無駄に時間を潰していた分だけ、だいぶ注目を集めてきたな。しっかり擬似スキルは使っている以上、優秀な奴らだけが見抜いているってことになる」

 俺はこれから、間引きを行う。
 戦闘行為が推奨されていないイベントではあるが、別にできないわけじゃない。

 いつまでも視られているというのは、あまり好ましくない……ジンリを恨んで、俺は恨まないでくれよ。


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