虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
探索イベント その11
どうやら、この家は呪われているらしい。
と言っても本当に怨念がどうこうというわけではなく、何らかの実験が失敗した結果が及んだとのこと。
鍵は研究者が持ち出していた、秘物的な代物で、だからこそ触媒として機能した。
脱出には返還という目的のため、それを家から持ち出さなければならないらしい。
「……そうなると、最終ステージはその実験場ということだな。上級でも屋敷のはずだったし、その上があるわけだ」
《その仮説は[掲示板]にも挙げられていました。サブも含めたすべてのエリアを解放すれば、そう考えている者が多いようです》
「それ、チュートリアルにあとで行く連中が増えるってことだよな? ふむふむ……これはこれで、面白くなりそうだ」
俺の知らないエリアの発見。
別に独占したいわけじゃないので、可能なのであればぜひともやってもらいたい。
リスクが分散されるし、何より早く済めば済むほどチュートリアルの必要性が失われるからだ……そうなれば、そこに入る際のリスクが減るからな。
もちろん、そうなれば俺を特定する確率も上がるわけだけども。
そこはまあ、上手く掻い潜ってどうにかするから問題なし!
「さて、情報収集は済んだな……部屋の中はどうなっていた?」
《解読用の資料、そして鍵がございました。初級ですので、比較的容易にこなせるようにしていたのでは?》
「だろうな。EHOの参加者は頭脳明晰な大人ばかりじゃないし……子供でもできるように、チュートリアル以外にも簡単な謎解きでクリアできるレベルの場所を用意した。そしてそれが、ここだったってことだろうな」
それでは満足できない、そんな連中はさらに上を目指せばいい。
基礎報酬は初級をずっと周回しているだけでも、そのうち集められるわけだし。
チュートリアルが同じ鍵では開けられない以上、他も同じ仕様だろう。
なので超速周回は難しいだろうが、それでも時間の掛かる探索よりは速く済む。
問題は、子供たち、そして脳足りんな大人がそんな延々と続く作業をできるかだが。
……運営的に、そういった部分を補える別のイベントは用意されているのだろうか?
「──で、これが鍵か。うん、チュートリアルのランダムな鍵と違って、これって固定されているのがよく分かるデザインだな」
特別な代物、という感が強い。
……そもそもこれを持ち出すって、よくバレなかったなとか思わなくも無いんだが。
「とりあえず、一度脱出するか。中級以降のエリア開放がどうなっているのかも、知りたいからな」
《畏まりました》
受け取った鍵を手に、出口へと繋がる扉の解錠を行う。
スッと通った鍵は音を立て、先へと続く道が開かれるのだった。
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