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虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

探索イベント その10



 エクリの擬似スキルも割と上手く行っているようで。
 まだ上位のスキルには違和感を感じさせているみたいだが、普通のスキルなら騙せた。

 新たなエリアである『魔物の間:初級』はどうやら、休人たちに大人気のようで。 
 やはり名前的に、バトルがあると思うのだろう……[掲示板]は大荒れらしい。

「最初から戦闘は少なめのイベントだって、告知していただろうに……いちおう、そういう戦闘行為は確認されているのか?」

《罠を設置する魔物は、攻撃を行うことで妨害することができるようです。また、仕掛けとして擬態した魔物も現れるようです》

「あー、ありそうだよな。宝箱に擬態するのが定番だが、扉や壁になるのもあるよな」

 実際、『SEBAS』が網膜に投影してくれた[掲示板]の情報の中には、そういった魔物を映した[SS]も載っていた。

 今はまだ、中級が限界のはずだが……そうなるとさらに上はどうなっているのやら。
 擬態を見抜けるのかどうか、また擬似スキルの参考にするために行った方がいいのか?

「初級はたしか、『不思議な家』だったな。一度、入室してみようか」

 思い立ったらさっそく実行。
 そろそろチュートリアルでやるネタも尽きてきたので、気分転換にやってみるのもいいかもしれない。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 イベントエリア 不思議な家

 特にプロローグイベントなどは発生せず、入室した途端にカウントダウンが頭上に表示された……なるほど、チュートリアルだけが無制限だったのか。

「これといった特徴は無いな……けど、部屋が増設されているな」

 ただ一部屋だったチュートリアルと違い、今回は廊下やら別の扉やらが置かれていた。
 そちらには鍵はほとんど掛かっておらず、最初から開けられるようになっている。

「けど、怪しい鍵付きの部屋が一つ。ここを開けるための鍵を、まずは別の場所で探さないといけないんだろう……『SEBAS』、頼めるか?」

《畏まりました──ドローンを展開します》

 一つひとつ、真面目に探すのは正直面倒なのでパス。
 元より、ゲームのストーリーは楽しんでも仕掛けなどは攻略情報を見る派である。

《ドローンより報告──鍵を発見したようです。そのとき、ストーリーに関わると思われる資料を発見しました》

「うん、じゃあそれを読んでみようか。暗号化などはされているか?」

《はい。おそらく、鍵で入る部屋にその開読に必要な情報があるのかと》

「了解。もしかしたら、どこかで俺……というか休人が必要になるかもしれない。そういうときは、気にせず呼んでくれよ」

 畏まりました、と返事を聞いた俺はソファでまったりと待機。
 しばらくして、解読を終えた資料が届けられるのだった。


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