虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
探索イベント その06
ピッキングをしたら、新しい鍵が現れた。
扉を開けてすぐに、それを確認した俺はまず人目の付かない場所へ移動する。
同時に、透明になるポーションを取り出して一気に飲み干す。
これで視覚的には見えなくなったので、次の作業に移行する。
「──『インストール:インビジブルクローク』、“アラートスルー”」
包んだモノを、隠蔽状態にしてくれる該当型の『プログレス』を利用。
そして、発動した能力は認識されていない間の探知・看破系能力の無効化。
本来なら隠蔽系スキルを使っての偽装工作だが、俺はそれらのスキルを有していない。
なので前提条件を無視し、だが認識されなければ使える能力を用いている。
「そして──出番だ、『エクリ』」
「──畏まりました」
「状況は聞いていたと思うが、いちおう確認だ。この『初級の鍵:解錠の間』を、何とかして俺の手の者による者だと認識させず、差し込んできてもらいたい。できるか?」
俺が呼び出したのは、とある特典を材料に創り上げた一体の人形。
ありとあらゆる生産技術が用いられ、擬似スキルというシステムも搭載している。
そんな女性型人形──終従人形の特徴は、『プログレス』が使えること。
これは他の『プログレス』の力で、無機物に命を与えているからだ。
「問題ありません。創者様の傑作である私にお任せを──『コレクトキャプチャー』」
俺の指示に応じた彼女は、さっそく自らの『プログレス』を起動する。
それにより生み出された──俺とまったく同じ外套、それを身に纏うと姿を消した。
『──では、行ってまいります』
「ああ、気を付けてくれ」
姿は見えずとも声は聞こえる。
彼女がここから離れてしばらくすると、一度目と同じように通知が響き渡った。
内容は当然、新エリアの解放。
その場所は──『解錠の間:初級』だ。
「『SEBAS』、状況は?」
《確認します……問題ありません。現状、エクリを捕捉した者は確認されませんでした》
「保険は掛けていたが。そうか、優秀なエクリがミスるわけないか」
警戒するのは当然、ジンリの手による者たち……だが、それだけではない。
新エリアの解放者は、当然それだけ情報を有している。
マナーの良くない者たちは、それらを求めて解放者に近づいてくるのだ。
まあ、彼らを無視しても問題はない……が揉める姿はかなり目立つ。
なので結局、誰にもバレないのが一番という結果に落ち着くのだ。
……そんなわけで、再び時間を空けてから俺はチュートリアルの部屋へ戻るのだった。
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