虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
探索イベント その01
イベント世界 ???
転送されたそこは、たしかにイベント世界なのだろう。
しかし、具体的にどこかと問われれば誰も答えられないはずだ。
真っ白い空間に、いくつかの家具が置かれている。
そして、不自然なほど目立つ扉が一つ……ここから脱出すればいいわけだな。
「……俺しかいない、な」
《いわゆるチュートリアルモードでしょう。情報を[ログ]に転載します》
どうやら[ヘルプ]に新規で表示されたらしい情報を、『SEBAS』が出す。
見てみると、脱出に必要な鍵を見つければいいそうだ。
謎解き要素は特に無く、このチュートリアルモードでは文字通り鍵を探せばいい。
家具のどこかを探せば、おそらく鍵は出てくるだろう。
「鍵付きなのに鍵が掛かってない……中に鍵があるのか。そういうスキルの練習用か?」
《おそらくは。解除、開錠、開封などのスキルが対象になります》
「結構あるんだな……いちおう、俺のコレでも解除できるか試しておくか」
稀に使う、『冒険王の七つ道具』。
その一つ、『万能開錠の鍵』がちゃんと機能するのかを事前に試してみることに。
鍵は内側にいくつか用意されており、使用した鍵の様式に応じて閉まる。
現実にもあるタイプや、魔法によるタイプなど多岐に渡るが……それらを全部試す。
「とりあえず、全部開けられそうだな。ただし、扉だけは無理と」
《それを可能にしますと、高難易度のクリア時に不都合が生まれるからでしょう》
「達成報酬があって、それを何度も取られたら困る……みたいな感じか。いや、この場合はある意味盗るだな」
万能の鍵ではあるが、ありとあらゆるモノが対象では無いということだ。
扉の鍵穴は、あくまでそう見えるだけで本当に鍵で施錠されているわけではない。
そう、昔ある創作物で読んだ話のように、小さくなって鍵穴を通る……なんて裏技みたいなことはできないのだ。
仮にできたとしても、その先にゴールはおそらく存在しない。
……何も無い場所へ、そしてそのまま不正者に相応の罰が与えられるはずだ。
「鍵がとりあえず、中に仕掛けられているものなら問題なく使えることは分かった。そろそろ出るとしますか」
《旦那様、その前に》
「おっとそうだった。ちゃんとやっておかないとな」
何をしているかと言えば、俺をツクルだと認識できないようにしておく偽装だ。
見た目、そして[ステータス]を本来とは違うモノへ。
改めて、準備が整ったことを確認し、引き出しの中で見つけた鍵の一本を取り出す。
……たくさんあったので、逆に見つけるのに苦労したよ。
鑑定スキルではすべて『鍵』としか表示されないので、全部手探りだったしな。
そんな鍵を扉の鍵穴に刺せば、カチャリと音を立て扉から光が漏れ出す。
そして、ドアノブを捻れば──その先には多くの休人たちが集まっていた。
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