虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
進まぬ物語 後篇
アイスプル
改めて[ログイン]をし、タクマとの話を『SEBAS』にもしてみる。
メインストーリー──グランドストーリーとワールドストーリーの二つの物語だ。
「それで、だ。アイスプルにワールドストーリー……というか、クエストの方でもいいけど。それは存在するのか?」
《存在しません──今はまだ、ですが》
「あるにはあるってことか」
《星核にアクセスしたところ、それらしき情報がございました。ただし、解放にはSPがまだ足りておりません》
SP。
スキルのポイントでも精神のポイントでも無く、それは星のポイント。
星命力と書いてSPになるのだが、その数値はたしか100がマックスだったはず。
それでも、定期的にエネルギーを供給して常に一定以上は確保しているはずだ。
《旦那様の【救星者】就職、多世界との交流などを通じ、アイスプルもまた着実に成長を行っております。初期値は100だった星命力も、今では1000を超えています》
「ふむ……それでも足りないと」
《はい。段階的に制限が施されており、それらが解除されない限り数値もまた一定以上になることがありません》
アイスプルのワールドクエストを発注するには、まずその数値を超える必要があると。
……新参者の世界であるがゆえに、そういうところから始めなければいけないのか。
「そういうものなのか……ちなみに、クエストが発注できるようになったとして。どういうものが報酬になるんだ?」
《不明です。ただ、すでに設定はされておりますので、他の世界同様に、確実に星にとって利のあるものであることは確かかと》
「ストーリーを進めていけば、ゲームみたいに世界もまた進んでいくわけか。そういえばなんだが、クエスト達成って一回限りになるのか? 一人でやるゲームならまだしも、ここはMMOでもあるんだろう?」
《大前提として、ストーリーに大きく関わるクエストは一度限りです。しかし、後から関われるよう、関連したクエストが発注されるようになります》
誰かが先に進めても、後追いができなくはない……というわけだな。
ただし、主要人物との関係性は、あくまで先にクリアした者だけの報酬なんだとか。
言わば初クリア特典、後続であるならばその差を自らの力で埋めなければならない。
……MMOかつVRな分、コミュ力まで問われる恐ろしいシステムと化しているな。
「まあ、いずれにせよ今はまだアイスプル関連のストーリーは進められないわけか。世界に彩りも与えたいし、いずれはできるようにしないとな」
《こちらでも、情報は集めてみましょう》
「ああ、頼む」
さて、イベントがあるんだったな。
休人たちは『プログレス』を使いまくるだろうし、ぜひとも成長させてほしい。
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