虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

進まぬ物語 前篇



 闘技場で一儲けした翌日、拓真がいつものようにEHOの話をしてきた。
 ……なんというか、ギャルゲーの友人ぐらい情報通なんだよな。

「──お前さんのやらかしに関しては、もう今さらな気がするから置いておくとして。久しぶりに、イベントが始まるぞ」

「そんなに今さらって気もしないけども。それで、今回のイベントは?」

「今回はずばり──探索だ! 難易度別に用意された建物の中から、クリアに必要なアイテムを探し回るらしいぞ」

「……探索ねぇ。まあ、前回が戦闘職とか生産職がメインっぽい感じだったから、今回は斥候向けなイベントか」

 闘技大会といういかにも戦闘職向けだったイベントだが、その割には特殊生産部門なんて縛り付きの部門もあったからな。

 そして今回、スポットライトを浴びたのは斥候役というわけだ。
 探知、解除、識別など……探索といえばな定番のスキルに補正が入っているし。

「難易度別、ねぇ……具体的に、どういう場所なのかの情報は?」

「小屋、一軒家、屋敷……ぐらいはあるらしいぞ。あと確証は無かったんだが、条件を満たすと神殿とかもあるらしい」

「神殿ねぇ……誰を崇めてるんだか」

「そういうとこも含めて、探索するのが今回のイベントなんだろうよ。もしかしたら、それがまた別のイベントに繋がっている……みたいな感じかもしれないぞ」

 ありがちな話だ。
 そもそもとして、小屋とか一軒家の方にも情報があるとか、そういう感じも。

「もしかしたら、各世界のメインストーリーにも繋がってたりして」

「…………なにそれ?」

「…………いやまあ、お前だしな。説明書を読まない、初ログイン時のOPオープニングも見ないヤツも知らないし、しょうがないか」

 メインストーリーとは。
 EHO全体で挙げられる、休人と原人たちが力を合わせて成すべきことらしい。

 たとえば冒険世界であれば、世界のどこかに封印されたナニカがあるんだとか。
 それを見つけだす……それこそが、冒険世界のメインストーリーらしい。

 武闘世界は武術の、魔法世界は魔法に関するストーリーが展開されている。
 全体の進行度は、[クエスト]から確認できるらしいが……知らなかったな。

「じゃあ、俺のアイスプルにもそういうのがあるのか?」

「いや、それはお前しか知らんだろ。その世界に居ないと、進行度は確認できないし」

「……メインストーリーねぇ。まあ、何にせよだ。イベントとなれば張り切ってやらないといかんな。ジンリには、やっぱり気を付けないといかんけど」

 幸い、現実側ではいっさい干渉してこないので一安心。
 ……たぶん、こっちだと瑠璃を警戒しているんだろうな。


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