虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

VSチャイナ娘 その10



 俺が少女の敵討ちに付き合った理由。
 それは通常よりも格段に速く、かつ効率的にお金を稼ぐことができるから。

 もちろんそれだって、方法を選ばなければより効率的な集金だってできたはず。
 それでも、この方法を選んだのは──就職条件を満たすためだ。

《上位の【商人】系統職業が提示する就職条件を、いくつか満たすことに成功しました》

「おお、そりゃあ何より。具体的に、どういう職業に就けるんだ?」

《解放された職業はございませんが、旦那様が率先的に動くことで【興行主】などに就くことが可能です。この職業は、主催となって一定以上の規模をイベントを開く際、旦那様の補助を行うことができます》

「……そんなイベント起こすつもり無いんだが。まあ、【闘資家】から派生したって感じの職業ではあるな」

 今回の場合は、【闘資家】の職業レベルをカンストを目的としていた。
 なので経験値を稼ぐ手段──つまり闘技に関わる金稼ぎを行ったわけだ。

 まあ、『俺=アンノウン/ゴンベエ』だと分かっているであろうジンリには、間者の眼でも通して情報を盗み見られていたかもしれないだろうが。

 ヤツ的には、俺がこちらの世界で何をしたいのかを図り切れていないのかもしれない。
 ……リーダーとして祭り上げられれば、どういったことを求められるのやら。

 少なくとも、こちらの手の内を完全に暴くまでは積極的に干渉してこないはず。
 なので俺は、【救星者】という切り札と共に己に出来得ることを増やしていくだけだ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 と金儲けの大義名分を掲げた後は、とりあえず収入のおすそ分け。
 ナヨ、そしてジーヂーへ今回得たお金のうち半分を渡した。

 額にすると、だいたい一千万ほど。
 プロボクサーなどに比べればやや劣るが、少なくとも敵討ちという理由で挑んできた少女が得られるような金額ではない。

 当然、彼女は固辞していたのだが……そこは爺の方があっさり受け取った。
 単にがめついからではない、それだけの価値のある試合だったからだ。

 それでも申し訳なさそうにしている彼女には、とりあえず提案を。
 何かあれば、武闘世界に関する情報を貰えることにしておいた。

 連絡のために[フレンド登録]を……ついでにジーヂーともしておく。
 どちらも優れた武人(片方はその卵)なので、関係を持っておいて損はしない。

「──では、いずれまた会いましょう」

「うむ、儂も早く貴殿と再戦できる機会を楽しみにしておるぞ!」

「お爺ちゃん! ……こ、今回はありがとうございました!」

「いえいえ、現実ならともかく、こちらであれば構いませんよ。またいずれ、今度は決勝で貴女と戦ってみたいですね」

 うん、暑苦しい爺に襲われるよりは、その方がいいのは確実だ。
 なんてことを思いながら、彼女たちと別れるのだった。


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