虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

VSチャイナ娘 その08



 ジーヂーがセコンドを行うことで、ナヨはアンノウンと戦えるようになった。
 しかし、それは体術に限定した場合の話、それ以外の要素──魔力などが絡めば別だ。

「では、手始めに──“千変宝珠・弾”」

 アンノウン(ツクル)の周囲に展開されるのは、魔力で構築された無数の弾丸。
 それらは螺旋を描き、次々とナヨへ向けて飛んでいく。

「──“柳流”」

 ナヨはその弾丸を、舞い踊るような動きで受け流していく。
 ……だが、時間が経てば経つほど、弾丸が彼女の周囲を通過する。

 弾丸をすべて捌き切ることはできない。
 そう判断した彼女が、致命傷になり得る弾丸だけを選び取って捌いていたからだ。

 この戦いの終わりは、どちらかがこの場から居なくなること。
 本来、休人は死亡時に神殿などに転送されるが……アンノウンはそうならない。

 なので、生命力の枯渇が敗因となるのは、ナヨだけ。
 ──そして、彼女の生命力はすでに限界に近づいていた。

「なるほど、ではでは──『爆』」

 コマンドによって、術式が追記される。
 弾丸の形状を保ったまま、着弾と同時に内部に籠められた魔力が爆発するように。

「ナヨ、儂の考えた“柳流”であれば、その程度問題にもならぬ。信じよ、己の技量を」

「……、……っ!」

「──これは、厄介ですね」

 言われるがまま、理想とした祖父の動きをイメージしてそれをなぞるナヨ。
 その行動そのものを『バトルラーニング』が支え、より本物へと近づけていく。

 ちょうどそのとき、飛来する弾丸。
 触れれば爆発するそれを、ナヨは──受けた際の爆風ごと受け流すことに成功する。

「ははっ、これは恐ろしい」

「今はそれでよい。すべてをゼロから始める必要は無いのじゃ。一から、先人たちから知るべきことを知り、そのうえでお主だけの武に磨きを掛ければよい」

「……うん、何か分かった気がする。今ならイケる──“シークラーン”」

 ナヨは自身の『プログレス』が、一段階上に至ったことを直感で認識した。
 同時に、新たな能力を一つ発現したことにも気づく。

 まるで物語の主人公みたい、そう自嘲しながらも新能力を起動。
 彼らのように目立った変化は無い、しかし彼女自身はそれをよく理解している。

「……何か、されましたか?」

「分かるんだ……ううん。どうか、手合わせ願います」

「なるほど……心境の変化、そして覚醒というところでしょうね。ええ、ならばこちらも合わせましょう」

 頭を下げたナヨ。
 それを新たな力を得る切っ掛けである、祖父やアンノウンへの感謝が籠められている。

 その姿を見て、アンノウンもまた拳を打ち合わせて一礼。
 お互いに構えを取り──全力を注いだ攻撃に移行する。


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