虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
VSチャイナ娘 その03
本物と偽物。
二人の『バトルラーニング』は、共に同様の効果を発揮する。
これまでに経験した戦闘経験を基に、対象との戦闘における最適な動きを行う。
初期は精度も低いが、無限に強くなる可能性を秘めた……いわば大器晩成型の能力。
──だからこそ、本物は現在の状況を理解できないでいた。
「なん、で……」
「…………」
「どう、して……」
「…………」
「全然、当たらないの……!」
「はて、どうしてでしょうか?」
導き出された最適解は、そのことごとくが宙を切っている。
予測すらも予測され、まぐれの当たりすら存在しない。
理由は何なのか、『プログレス』の性能に差があるから? 自分は持っていない何かがあるから? ……いずれにせよ、その体術はアンノウンに届いていなかった。
「──“アタックシフト”!」
「おや?」
このまま戦っていても、自身が消耗するだけ……そう判断し、切り札を使う。
これまでの戦闘経験から、最適な動きを意図的に選び──肉体に反映させる。
何度も何度も師であるジーヂーと打ち合った結果、手にすることができた力。
同じ『プログレス』であれど、派生する力は違うはず……そう信じ、起動する。
「……そのような力が。ええ、ご期待には沿いましょう。私はまた、別の手段で応じますよ──“オートカウンター”」
攻撃に特化した“アタックシフト”に対して、“オートカウンター”は反撃特化。
取るべき選択を狭めることで、反射速度や精度を高めることができる。
攻める者と受ける者。
どちらの方が体力を消耗するのか……それは歴然、だからこそ攻める者は果敢に、一気に蹴りを付けるべく動き出す。
「ハァアアア──“越境”!」
「! ……なるほど、さすがは彼の御仁のお孫さんですね」
「──“龍砲”!」
ナヨが放つのは『アーツクリエイター』を持つジーヂーが編みだしたオリジナル武技。
両手を重ね、空気を圧縮──弾丸のようにして撃ち出すというもの。
普段ならばまだ使いこなせないが、今は肉体の制限を“越境”と『バトルラーニング』によって解放しているため、限定的にだが使うことができていた。
アンノウンはただそれを見るだけ。
反撃に転ずるわけでも、逃走するわけでもなく……見定めていた。
そして、構えを取る。
舞いでも踊るかのように、しなやかに動く体……ナヨはそれに、見覚えがあった。
「模倣ですが──“柳流”」
「っ!?」
「ええ、ええ。大変良いものですね、この武技は。しっかりと学ばせてもらいました……まあ、私には本来不要な物ですがね」
「! お爺ちゃんを……バカにするな!」
怒りのままに、感情のままに動くナヨ。
そして、その姿に……アンノウンは、ニヤリと笑みを浮かべた。
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