虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―
布教方法 中篇
突然街で女騎士に絡まれたと思ったら、実は俺の奴隷(仮)でした。
なんだか創作物でありそうな出来事だが、それはつい先ほど起きたばかり。
とりあえず人気が無い所……だと余計に怪しまれるので、大胆にも彼女の所属する宗教団体──アズル教の教会へ向かう。
アズル教、それは今休人たちの中でもかなり人気な神を崇めている宗教団体。
祈れば幸運──アイテムのドロップ率は向上し、原人たちからの好感度も上がる。
だが、俺にとってはアズル教という名は相応しくない。
これは俺と同様、崇め奉られている女神の正体を知る者ならばこう呼ぶはず──
「ルリ教団、また来てしまいましたか」
相互認識での音声変換システムが、自動的に崇められている女神の名を書き換える。
なので俺が「ルリ」と言っても、前を歩く女騎士には「アズル」と聞こえているはず。
彼女が向かった先にあるのは懺悔室。
特に言うべきことは無かったのだが、彼女が中に居た修道女に話を付けるとあっさり入ることになる。
「さて、ここまで来ればもう大丈夫のはず。貴方には、事情を訊かせていただきます」
「ふむ、事情とは?」
「私が貴方の……奴隷となったのは、貴方の監視が目的です。もちろん、アズル様にそのような意図はありませんが、上層部にはアズル様に近づく貴方が何者なのかを知りたい者が居ますので」
「ずいぶんとはっきり、監視などという不穏な言葉を出しますね」
だがまあ、それも理解できる。
今さら隠し事をしても無駄だと、分かっているのだ。
あとでバレるより、ルリにその気が無いことははっきりと伝える。
彼女たちにとって、一番に優先されるのはルリの意思だからな。
「なるほど。それで、私はどういった事情をお聞かせすればよいのでしょう」
「……貴方が、いえ貴方様がアズル様の御寵愛を受けていることです」
「寵愛……あっ、そちらでしたか」
一瞬、夫婦云々の方かと思ったが、そちらではなく(命運神の寵愛)の方だったか。
正直、俺も理由は不明だが……まあ、ルリの粋な計らいだろう。
「──『祝福の宝珠』、これに聞き覚えはありますか?」
「……遺失した神話級のアイテムで、どんな神々からも祝福を授かることができるという品ですか。まさか、本当にそれを?」
「私は休人ですので、奇跡的にそういった機会に恵まれました。確認であれば、こちらのデータを送りますよ」
彼女は『プログレス』を付けているので、情報のやり取りもスムーズにできる。
予め撮っていた鑑定結果を送れば、それを見てある程度は納得してもらえた。
「……なるほど、分かりました」
「それは良かった。これで、問題は解決……そうだ、もしよろしければ、相談に乗っては頂けませんか? ここは懺悔室、相応しい場所だと思いますので」
「? まあ、ご命令とあらば」
懺悔室ってのは、ただただ悩める子羊を救うための部屋じゃないからな。
ちょうどいい、ここで布教についていくつか聞いておこう。
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