虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
異神話対戦 その19
さらに弱体化した神様を、二本の鎖で縛りスタンガンで気絶させた。
神をも恐れぬ所業……なのだが、今までにやってきたことと比べるとなぁ。
その酷い有様に、捕縛後も警戒していたはずのアインヒルドも武器を収めるほど。
うん、ギャグ漫画のように口から黒い煙が出ているし。
「うーん、これでとりあえず終わりだな……契約もこれで、正式になるわけだ」
「そうです…………はっ!」
「うんうん、正式雇用だな。これからは、名前も否定できなくなるなアインヒルド」
「うぅ……」
俺がこの依頼を受ける前、北欧神話の主神であるオーディンと行った取引。
それは仮で止まっていたアインヒルドの契約を、神の名を以って進めさせるもの。
なのでこれまで仮契約だからと名前を遠回し(?)に否定してきたアインヒルドも、今回の依頼が終われば、それもできなくなる。
戦乙女たちにとって、人族やエインヘリヤルから名を与えられるという行為は、とても重要で親愛の証と言っても過言ではない。
当時の俺はそんなこと知らないであだ名をつけた感覚だったが、改めて調べてみればそういった常識があったようだ。
「……俺はエインヘリヤルみたいに勇敢に戦うことはできない。だが、これまで愛する家族を守るための戦いにおいて、彼らに背くような真似だけはしたことがない」
「…………」
「だから誓えと言うのなら、それは俺一人の誇りにじゃない。俺個人ではなく俺という父親としての存在に賭けて、君という戦乙女に名誉ある戦いを捧げよう」
「! ……その誓い、受け取りましょう。この戦乙女『アインヒルド』──あなたにすべてを捧げます」
彼女のその言葉と共に、俺の掌には刻印、そしてルーンの刻まれた石が現れる。
現実では存在していないその文字は、こちらの世界で戦乙女のルーンと呼ばれる物。
「……まさか、結局貴方と正式に契約することになるとは」
「まあ、満足させるさ。ついでに言うと、正直特別な場合を除いて今と何ら変わらない。しいて言うなら、頼みごとが増えるだろう」
「つまり、ここで貴方のためにただ働いていろと……なんというダメご主人様でしょう」
「…………間違っていないけど、たしかにダメなご主人様みたいだな。ポイントは溜めてもらおうとは思っていたけど、そこまで言わなくていいだろう……」
だが実際、アインヒルドがアイスプルに来てもやることは暇そうなユニーク種や災凶種と戯れるぐらいしか無い。
まあ、正式な契約を結んだので、これまで以上に技術流用はするつもりだが。
あとはそうだな、家族に紹介したりで呼ぶぐらいだな。
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