虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
異神話対戦 その18
脱獄神の神威の能力──神能(仮)によって、収容された俺とアインヒルド。
その動力源たる神威を削ぐべく、看守を倒したり牢を開放したりとやりたい放題。
やがて辿り着いた、もっとも堅固な門扉。
鍵の無いそこは、元より誰も逃がすつもりが無いという示唆なのだろう。
「まあ、関係ないけど。『万能開錠の鍵』は使えずとも、やり方はいくらでもあるし」
扉に近づき触れてみる──瞬間、強烈なエネルギーが押し返すように俺に飛んでくる。
弾き飛ばされるのが本来の流れだが、肉体強度の低い俺なので──肉体が炸裂した。
すぐに死に戻りし、『生者』の権能によって再度復活。
自分に何が起きたのか、[ログ]に書かれた情報から考察する。
「……大丈夫、ですか?」
「ああ。どうやらこれ、本来なら扉を攻撃した相手に倍加したエネルギーをぶつけるための仕組みみたいだな。で、俺は1に近い力を2倍にされて、それすら耐えられなくて死んだわけだ」
「…………本当に虚弱ですね」
「そういうスペックだからな。それより、これなら問題なさそうだ。アインヒルド、脱出したらすぐにやることでも考えておいた方がいいかもな」
さて、再び扉にチャレンジしよう。
触れれば反発されるが、その瞬間に手を結界で固定して強引に維持。
バチバチと拒絶しようとエネルギーが送られてくるが、それらを無視してさらに奥へ。
どんどん反発も強くなるが、それでも押し続け──ゆっくり扉は開かれた。
「さぁ、行こう」
「はい!」
そして、俺たちは開かれた扉を潜る。
一瞬、視界が切り替わるような転移に似た感覚を覚えたかと思えば、再び目に入る光景は闘技場となっていた。
「戻って来れたみたいだな……そして、どうやらもうおしまいらしい」
「う、うごぁぉおお……」
声にならない声を上げ、悶絶しているのは先ほどまでイキッていたはずの脱獄神。
どうやら内部での活動は、きっちり彼に影響を及ぼしていたようだ。
「あとは放置していても、安全だとは思うけども──『神狼捕鎖』、『神狼縛鎖』」
神代の魔道具(モドキ)によって、複製された獣人国の国宝たち。
不完全ながら、神すらも律することができる超高性能な束縛具。
伝承では拘束に失敗していたが、それは一本ずつ試した結果。
今回は二本用いているうえ、弱体化している……それゆえの効果だ。
「ふぅ、これで良し。アインヒルド、もう警戒しなくてもいいぞ」
「…………」
「んー、じゃあこれも──スタンガンっと」
「──ッ!?」
拘束され、神としての力も大半が削がれている現状。
ある意味人族と同じレベルまで堕ちてきた脱獄神に、激しい電流が走る。
殺傷レベルの高圧電流によって、物言わぬ姿となった脱獄神。
それを見てアインヒルドは──若干引きつつも、“千変宝珠”を解除するのだった。
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