虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
異神話対戦 その15
逃げ出そうとする脱獄神を相手に、俺とアインヒルドは防衛戦を行う。
迎えの者が来ればこちらの勝ち、その前に逃げられれば向こうの勝ちとなる。
とはいえ、弱体化しようとも相手は神。
ステータスのシステムを超えた動きが、種族単位で可能な連中だ……どれだけ対策を用意しても安全とは言えない。
「不敬、不敬なるぞ人族! その程度で、この私に触れようというのか!」
「くっ……さすがは神、武を理解せずともここまでの動きを見せるとは」
最適な動きで『バトルラーニング』が攻めるのだが、人体の限界を遥かに超越した動きで脱獄神は回避していく。
ついでに言うと、脱獄を担当している神だからだろう。
時々関節を外しているとしか思えないような、ありえない『ぐねり』を見せてくる。
要するに、最適な動きと通常の人体の動きで予測しても無駄になるわけで……。
現在、それらを戦いながら修正しつつ、前へ前へと攻撃を繰り返している。
「──“千変宝珠・矢”プラス『光』」
「むっ……戦乙女が、邪魔をする気か!」
「“放射”プラス“穿撃”」
魔力の球体を矢の形にして、脱獄神に放っていくアインヒルド。
その際、あえて弓も生成して、射る形で飛ばしている。
この時、彼女の『プログレス:マーシャルアーツ』が発動。
射撃系の武技に加えて、本来は利用できない刺突系の武技が同時に矢へと付与される。
ルーン文字が刻まれ、魔力による事象改変が発生。
鋭い一撃でもなお、攻撃とならなかった矢が──突如として発光。
「ぐがぁああああああ!」
「やはり、攻撃そのものは通じずとも、起きた現象そのものは通りますか」
「さすがです──疾ッ」
「くそっ、分かってさえいれば……っ!」
光に目をやられるということは、見た目同様にある程度人と同じ構造をしている。
なので、死角から肉体破壊レベルで地面を蹴りだし──擬似的な縮地を再現。
それでも気配を読んだのか、慌てておかしな動きで回避する脱獄神。
しかし──すでに『バトルラーニング』は解析を終えている。
「まずは……一撃です」
「ぎゃぁあああああ! 痛い、痛いぃいいいいいい!」
「ふむ、[モルメス]及び『神殺し』の効果検証はできましたね。ご協力、感謝します」
「き、きき、貴様ぁあああああ!」
本来、人族というかシステムの範疇でしか強くなれない人が純粋な神族へ攻撃を与えることはほぼ不可能だ。
だからこそ、矮小な人に痛みを与えられたと成れば──キレる。
弱体化しているはずなのに、膨大な神気を生み出す脱獄神……ここからが本番か。
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