虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
異神話対戦 その14
どこかの神話集団から逃げ出した神を捕まえ、送還するのが俺の今回の仕事……探す時間を省き、闘技場に強引な転送を行った。
すでに北欧神話の陣営から、その神話の方へ連絡してもらっている。
なのでそれを待つだけなのだが……ただ放置しているだけでは、当然逃げるだろう。
「──というわけで、俺と二人でなんとかしばらく食い止めてほしい。例の鎧、アレを利用してもいい」
「相手は神ですよ? たとえ抜け神であろうと、その力は──」
「抜け神……抜け神だと!? ふざけるな、ふざけるんじゃない!!」
『っ……!』
時間稼ぎの作戦会議をしていたのだが、神様の耳は地獄耳だったようで……抜け神という単語に反応して激情する。
「……偉大なる神よ、貴方様のお名前は?」
「私は脱獄神■■■■■■■! 断じて、私の行いは抜け神などではない……そう! すべては神威のままに、これは定めなのだ!」
「…………そうですか。しかし、貴方様の行いは、他でもない貴方様の神域における主神様によって抜け神として認定されています。矮小な人族の身、その意に背くことなど恐れ多いです」
構えるのは『死招手刀[モルメス]』、神にも一撃を加えられる魂へ干渉可能な短剣。
そして、[称号]の一つ『神殺し』をセットしておく。
ラグナロクイベントを経て得たものだが、そんな事情を脱獄神は知らない。
セットしたことで、効果が発動……その感覚を向こうも察知するわけで。
「! ……貴様」
「おや、ご理解いただけたようで。逃がしはしません、どうか精一杯お足掻きください」
「ハァ……まったく、どうしてそう挑発するのですか──『マーシャルアーツ』」
「まあ、そういうノリの方が面白いかと思いまして──『バトルラーニング』」
手の甲に武器の印を浮かべ、アインヒルドは魔術“千変宝珠”を発動。
現れる魔力の球体を操作し、自分の扱いやすい武器へと形状を変える。
何でもそつなくこなす彼女なので、得意な武器はあっても苦手な物は無い。
また、属性を付与したりもできるのでアシストを任せる予定だ。
「……神に挑むというのか」
「あくまでも、時間稼ぎですがね。こちらは貴方様を倒さずとも、勝利条件を満たすことができますので」
「愚か、愚かなり! たとえ弱体化しようと神は神! 人の身で、抗うというのか!」
「ですから、何度も言ってますように……時間稼ぎだけですよ」
実際の所、護送役がいつ頃来るか、俺には知らされることが無い。
なのでただひたすら粘り、そのときが来るのを待つだけだな。
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