虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
異神話対戦 その08
ヘラクレスの発する『■■』という単語。
それが俺のような一般人では認識できないナニカであり、超常的な現象を生み出す鍵であることは理解できた。
地面を割り砕くほどの怪力、棍棒を蛇に変えるなど……まだ二パターンだけだが。
しかし、『SEBAS』にはそれだけで充分なようで──
《──『開帳』、旦那様の認識可能な範囲で変換すると、ヘラクレスはそのように宣言しております》
《開帳って単語自体は、まあ分かるけど……神社仏閣は関係ないよな?》
《実際にはより複雑な内容を告げているのですが、神の力を用いているため人族では認識ができません。閉じていた能力を再び開く、そういった意味で『開帳』が相応しい翻訳となりました》
かつて、『レムリア』の名前を聞き取れなかったのとはまた別の理由だろうか。
ともあれ、やはり叫ぶごとに過去に関する何かを解き放つことができるのだろう。
棍棒は持ち手より先が尻尾となり、それより先が蛇になっている。
──ただし、そこに至るまでになぜか首が九本になっているけど。
《今回の場合、『レルネのヒュドラ退治』と呼ばれる伝説を再現していると思われます。不死殺しの毒を持つ蛇、それに旦那様がどのように対応するのかを見極めるのでしょう》
「……なるほど、了解しました。ただ、言っておきますと、私は不死ではありませんのでただの毒でしかありませんよ?」
「おっ、マジか。まあいいや、それでもやってみてくれよ──怪物殺しをな」
「……やるだけやってみますよ」
猛毒の吐息で周囲を腐食させる、九本首の巨大な蛇。
対する俺は強力な結界を身に纏っているものの、体自体は非常に貧弱。
それでも、俺はただの弱者ではなくこれまで生存し続けた『生者』。
その経験で得たアイテムを使い、どうにかしてみようと足掻いてみる。
「──“星記改悪”、“孤独蟲毒”」
前者は『愚かな賢者』から貰った術式、そして後者は──『騎士王』が創った術式。
発動後、俺は結界を解除して前に進み──猛毒をその身に浴びる。
「っ、バカ野郎!」
「……いいんですよ、これで。私には貴方のような剛力はありませんので、英雄の所業には相応の代償が必要なんですよ」
「……辛く、ないのか?」
「ええ、もう慣れました」
システム的に緩和されているだろうし、あくまで再現のはず。
不死でも耐えられなかったというヒュドラの毒だが、それでも俺はピンピンしている。
ただ、間違いなく俺の精神の強さがどうこう……といった問題ではない。
単純に、外的要因が俺の体を守ってくれているからだろう。
さて、毒で死に続けている俺だが……普段とは別の目的でそうしている。
いつになれば、俺はアレが使えるようになるのやら。
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