虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

異神話対戦 その04



 俺対ヘーロースとの戦いが終わり、次に闘技場を使うのは彼らとエインヘリヤルたち。
 これまでも互角の戦いを繰り広げられていたらしいが……だからこそ、オチが分かる。

「はい、順番に! 順番にお願いします!」

「はい、ありがとうございます。説明書……はいちおう付けておきますが、無くてもとりあえず大丈夫です。それでも、ちゃんと受け取ってくださいねー」

 そしてそのオチ通り、ヘーロースたちが俺の用意した屋台に並ぶ。
 店頭に置かれるのは、先ほど片側の陣営しか使っていなかった──『プログレス』。

 それこそが、これまでは無かった力量差となったのだ。
 そして、それを格安で売る……そうなれば彼らの行動は速かった。

 安全性に関しては、武を合わせたからこそエインヘリヤルたちの様子ですぐに分かる。
 問題は交換材料だが……それもまた、すぐに解決した。

「しかし、これがギリシア硬貨なんですね。もしかして、こちらよりも制度が整っているのでは?」

「無駄口を叩いていないで仕事をしてください…………あと、こちらではより武を尊んでいるだけです」

「芸術的な面も、無くは無いと思いますが。まあ、それはいいとしましょうか」

 ギリシア神話では、ポイント制度な北欧神話と違ってちゃんと貨幣制度が整っている。
 お代として、それらを少しずつ頂くことで取引を成立させていた。

「お買い上げありがとうございました! これで全員か……ふぅ」

「お疲れ様です。しかし、あのような低価で売ってよろしかったのですか?」

「まあな。実際、ヴァルハラだとポイントで実質タダになってた物だし。向こうでの取引材料も欲しかったところだ、あるに越したことはないだろう」

 青銅貨、虹銅貨、これらをよくギリシアでは使うらしい。
 前者は主に日常生活で、後者は神々関連での利用なんだとか。

 虹銅貨を出してくれた奴には、オプションマシマシの『プログレス』を贈っておいた。
 いろんな面で便利なので、ぜひとも活用してもらいたいな。

「で、交流試合は終わったんだが……この後はどうなるんだ?」

「? いえ、まだ終わっていませんよ」

「それはどういう──」

「エインヘリヤルとヘーロースたちとの交流が第一幕だとして、第二幕が用意されているということですよ」

 英霊同士の戦いが茶番になる、そんな戦いの心当たりは一つしかない。
 ……神と神、そんな超常的な戦いがラグナロク以外で観れるのか。

「……ただ、それだけでは無いとも思いますがね」

「ん? 今、何か──」

「いえ、何も言っていませんよ」

《旦那様、アインヒルド様は──》

 残念だが、不吉なフラグは調べさせてもらうぞ……嫌だ、俺は神となんて絶対に戦わないからな!


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