虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
仙人談(02)
ツクルの去った仙郷……いや、仙郷を内包する山──蓬莱山にて。
三人の仙人たちが、玉座を置いた部屋にて語り合っていた。
「……ねぇ、いつになったらこれを解いてくれるのさ」
「王……反省する気は?」
「反省も後悔もしない! あたしの選択に間違いなど無いのだから!」
「…………何度も思うが、当代の【仙王】なのか、この振る舞いが。才覚だけであれば、儂以上かもしれぬのに」
一人は玉座に仙術で拘束され、身動きが取れない少女──当代【仙王】。
一人はそんな少女に反省を促し、溜め息を吐くはめになった青年──『闘仙』。
そしてもう一人は老人……ただし、その姿はやや透き通っている。
幽霊でありながら、この地の管理者として仙人を守護する彼は──初代の【仙王】だ。
「もうオジジの話は聞き飽きたよ……儂の若い頃はって言う老人の言葉って、信憑性が無いんだよね」
「王!」
「よいよい。それよりも、今回の報告を聞かせてもらった。仙人としての純粋な力、そして職業の進化などもあったようじゃな。大変めでたい……がしかし、それでも『生者』の助力が無ければ死傷者が出ていたか」
「そのようです。しかし、今回は今までよりも強力な魔物が出現していたとのこと。何かご存じですか?」
蓬莱山内部の迷宮『通天の晶洞』にて、今回起きた魔物の大量発生。
今までも起きていた問題だったのだが、出現する魔物の位階が平均的に高かった。
そのため仙人や見習いたちの中に、何人かの犠牲者が出ている。
幸いにも、ツクルのドローンが即座に回復薬をばら撒くため、全員生存しているが。
「おそらく、『生者』と同じ星渡りの民……いや、休人じゃったか? 奴らの行いが、星への影響を促しているのじゃろう」
「と、言いますと?」
「地脈や龍脈、さらには星脈までもが明らかにこれまでとは違う。速度、位置、勢いなどが場所によって変化しておるのじゃ」
「それは……!」
それぞれの『脈』によって、自然や営み、そして魔物の発生率などがコントロールされている……それが狂えばどうなるのか、今回の件はそれを証明するものとなった。
「たしか……『セーブ石』、じゃったか? アレは中でも星脈を喰らう。休人が来て、配置を交渉するのであれば、そちらは断っておいても良い。最悪、『生者』が同郷の誼として何とかするじゃろう」
「オジジー、ツクル頼りでいいの?」
「……アレの理は、儂らでも理解できぬ部分が多いからな。できぬことはできる者に任せればいいんじゃよ」
「それもそっか―……あっ、じゃあ──!」
この後、【仙王】が二人からお説教を受けることになるのは言うまでもない。
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